ロシアとの結びつきが強い北海道

 北海道は、日本で最もロシアに近いところ。北海道から見れる外国は、ロシアだけです。なんたって、日本最北端の稚内市から、ロシア連邦のサハリン州までは40kmくらいという近さです。晴れた日には稚内市から宗谷海峡を隔てた向こう側に、サハリンの島の影を見ることもできます。

 北海道は特に、ロシアと近いということもありますが、歴史上ロシア(旧ソ連)との結びつきは強いものがあります。今回は、そんなロシアと北海道との関係をピックアップ。

紹介動画(ムービー)

はじまりは?

 アダム・ラクスマンといえば、きっとおわかりでしょうか。1792年、根室港にロシアと日本との通商を求めて来航した人です。これにより、日本の歴史でも重要な一面を迎え、北方警備つまり北海道の警備を強化することにつながりましたし、その後のロシアとの関わりもここからスタートしたといえます。

 ラクスマン一行のエカテリーナ号はその後、箱館港に外国船として初めて入港し、1859年の開港も手伝って函館もロシアとの結びつきが強くなっていきました。函館には今もその名残が多く、たとえばハリストス
正教会、旧ロシア領事館、ロシア人墓地
があります。

ロシアの歴史が各地に刻まれている北海道!

 その他、道内各地にロシアの歴史が刻まれています。道北にある猿払村(さるふつむら)海岸沿いにはロシアのインディギルカ号慰霊碑があります。旭川市では、ロシアからやってきた野球選手スタルヒンの名を刻んだ球場もありますね。

 日本最北端の街、稚内市(わっかないし)は、サハリンに最も近く航路も古くから開けていました。かつてはサハリン(樺太)も日本の領土でしたので、各地は漢字表記の地名でした。また、樺太開拓使が置かれた時期もありました。

 サハリン(樺太)と千島列島の領土の変遷はめまぐるしく、一時は樺太・千島交換条約で樺太が領土でなくなり千島列島が領土になったり、一時は南樺太が領土になったりしました。その延長で現在「北方領土(北方四島)返還運動」というのが起こっているわけですね(詳細は割愛しますが、道内をドライブしていると、特に根室界隈には「返せ!北方領土」という大きな看板を頻繁に目にします)。

ロシアとの交流・貿易が多い!

 ロシアと歴史的に見てもかかわりが深い北海道ということですが、現代の交流や貿易の面でも活発です。ロシアの州や都市と姉妹都市提携している道内の市町村数は、日本一です。

 北海道とサハリン州の姉妹提携をはじめ、「日ロ友好最先端都市」をキャッチフレーズにする稚内市はサハリン州の3市と友好提携(コルサコフ市とは友好港湾も)、函館市も2市と提携するなど、道内とロシア間に15程の提携があります。

■道内のロシアと姉妹・友好都市提携をしている自治体


北海道とサハリン州
札幌市とノヴォシビルスク州ノヴォシビルスク市(H2.6.13)
旭川市とサハリン州ユジノサハリンスク市(S42.11.10)
函館市とウラジオストク市(H4.7.28)・サハリン州ユジノサハリンスク市(H9.9.27)
釧路市とサハリン州ホルムスク市(S50.8.27)
小樽市とナホトカ市(S41.9.12)
北見市とサハリン州ポロナイスク市(S47.8.13)
留萌市とブリヤート共和国ウランウデ市(S47.7.5)
稚内市とサハリン州ネヴェリスク市(S47.9.8)・コルサコフ市(H3.7.2・H4.9.8友好港)・ユジノサハリンスク市(H13.9.9)
紋別市とサハリン州コルサコフ市(S41.4.8)
名寄市とサハリン州ドリンスク市(H3.3.25)
根室市とサハリン州セヴェロクリリスク市(H6.1.27)
石狩市とワニノ市(H5.6.3)
天塩町とサハリン州トマリ市(H4.7.28)
岩内町とスラビヤンカ町(H9.7.26「岩内・スラビヤンカ友好協会」)
猿払村とサハリン州オジョルスキー町(H2.12.25)

 北海道の大きな港町にはロシア船がたくさん入港するところもあります。
平成16年の財務省の統計では、北海道に入港する外国船の5割にあたる4千6百隻がロシア船だとか。ロシア船入港1位は稚内港(対ロ貿易輸出入額でも1位)、2位は根室港です。


ロシア語の表記がある風景(紋別市港湾地域)

ロシア語が馴染み深い北海道!(でも読めない……)

 そんなわけで、稚内市と根室市は特にロシア人が多いわけです。根室市
にいたっては年間2万人のロシア人がやってくるとか。ロシア人の道内宿泊地第1位には根室市、そして稚内市もトップ5に入っています。だからこそ看板もロシア語が必要になってきます。青い道路標識だってローマ字表記のさらに下にロシア語併記です。スーパーの閉店案内もロシア語というところもあります。

 公立学校によってはロシア語の授業をしているところもあります。根室市公式サイトでは、英語版のほかにロシア語版も兼ね備えています。そんなふうに、近年ロシア語への対応が徐々に進んできているようですね。


ロシア語の表記がある風景(稚内市港)

補足:サハリンへ行くには……

 稚内からコルサコフまではフェリー航路があります(小樽からの航路は貨物がメイン)。それも5時間半で着いてしまう近さ。飛行機での国際便もあって、函館空港と新千歳空港から、ユジノサハリンスクまで近年になって開設されています(1994年と2001年から)。