夏に見られる西興部村の氷のトンネルとは

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 道内のとある場所では、夏なのに氷でできたトンネルが見られるという。暑い季節にそんな場所があるなんてと驚くかもしれないが、西興部村にそれが実在する。氷のトンネルとは何なのか、どうして出来上がるのか。(写真:DO PHOTO)

 雪が降る道内では、標高が高いところは夏近くまで雪が残っている場合がある。それは場所によっては8月になっても続くこともある。気温が一ケタ台ということすらある。

 西興部村字上藻の山奥に「氷のトンネル」と呼ばれる名所がある。それはウエンシリ岳山麓にあり、真夏と言うのに4度くらいという肌寒い気温である。氷のトンネルとは言うが、全体としては氷と言うよりは雪でできている。地面に面する部分に大きな穴が貫通し、さながらトンネルのようである。高さは約3m、幅約4.5m程度にもなる。雪が多いときは全長500mにも達し、日本一と言われる。

 天然の雪の洞窟について疑問点が二つ生じる。どうして夏までこんなに雪が解けないのか。そしてどうしてトンネルができるのか。

 ここだけ雪が解けないで残っているのは、ちょうど谷間に位置する場所であるということ。両側が絶壁で、そこから落ちてきた雪が積もり積もって最後まで残る。高さは十数メートルに固く積み重なるが、その雪崩で一緒に木の葉などが落ちてくる。これが雪の山を覆っているために融雪を遅らせるとされている。

 では、地表部にトンネルが出来上がるのはどうしてか。沢であることから、そこは雪解けの水が通る。この沢水は藻興部川の源流の一つである。熱対流により温かい水の通る部分が融かされ、トンネルが出来上がると言うわけである。

 しかし、氷のトンネルの魅力はこれだけではない。トンネルの内部にも自然が形作る造形美がある。融かされた内部に亀甲状の模様(アプレーション・フォロー)が生じるため、入口から光が差し込むとキラキラ輝くのだ。

 こうした氷のトンネル自体は他でも見られると言うが、一般の人が気軽に行ける場所は全国でもここくらいである。この日本一の氷のトンネルは7月上旬から8月下旬までが見頃とされる。以前は一般見学者が多く訪れていたが、2001年8月に崩落事故が生じたことから、それ以来見学が禁止されている。2005年以来西興部村商工会青年部が主催する、一日限定開放イベントで見ることができる。冷気が上がる氷のトンネルは幻想的である。