苫小牧市科学センター「ミール展示館」には、ミール予備機(コア・クバント)の展示と、実際に使用されたミール船内作業服が展示されています。現存するミールを見られるのは世界でもここだけ、世界唯一です。なぜそんな貴重なものが苫小牧に?と疑問に思われるかもしれません。
宇宙ステーション「ミール」とは?
旧ソ連が1986年2月19日にコアモジュールを打ち上げた宇宙ステーションを「ミール」と呼びます。ミールはモジュールを接続して活用されました。このミールは故障や老朽化のため廃棄処分されることになり、2001年3月23日に大気圏に突入(ニュージーランド沖)、15年の役目を終えました。
このミールに関連して、日本人初の宇宙飛行を達成した秋山豊寛氏がいます。1990年12月に宇宙体験を行いました(その後スペースシャトルでは毛利衛氏が日本人初)。この予備機のコアモジュール「ミール」、天体物理観測モジュール「クバント」が苫小牧市科学センターに展示されています。
これらは、実際に宇宙で活躍した1号機の予備機で、打ち上げが失敗した際に使用される予定でしたが、打ち上げ成功により使用する必要がなくなりました。
宇宙好きならワクワクしちゃう!世界唯一のミール展示館
「ミール展示館」はなんと「入場無料」。行かなきゃ損!とはこのことです。展示館は苫小牧市科学センターに隣接。連絡通路でつながっているので、両方を楽しむことができます。
「ミール」はもともと屋外展示物だったようですが、覆う建物として「ミール展示館」が建設されました。展示館はミールを収容する保管庫のようで、2階建て吹き抜けの館内中央に、モジュールを連結した形でドーンと置かれています。2階通路から全貌を見てみると、これが宇宙に浮かんでいたのか……とちょっと感動します。(ただしミール展示館のものは実物予備機なのであしからず。)
ミールは外から眺めて終わりというのではありません。設置されている階段を上って、コアモジュールの居住スペースに入ることもできます。
操縦席、トイレ、縦長で立って寝る寝室、作業台、扉が斜めに開く冷蔵庫、トレーニングマシーン、洗面台やシャワーなどなどを見学できるようになっているのです。実際に内部に入ってみると狭いなという印象。この中を無重力で動きまわるというわけです。
パネル展示や、ミニチュア模型、そして宇宙食のサンプル等が展示されており、宇宙一色。特に宇宙食はコレクションかというほど数多く陳列されています。国産や旧ソ連のものだけではなく、NASAのものなど諸外国の宇宙食を比較するのも面白いものです。
ミール展示館では、ミールのほか「H2ロケット模型」「防災救急ヘリコプターはまなす」という、ミールとは直接関係ない物も展示されています。休憩がてら眺めてみるのもよいでしょう。
実際あまり入場者がいないようですが、是非訪れていただきたいです。特に平日は人が少なくて一人占めのようでした。定期的にミールガイドツアーが開催されているようです。無料のミール展示館、意外と穴場、オススメです。
なぜミールが苫小牧に?のなぞ
ミールに関する情報が詰まっている資料館がなぜ苫小牧にあるのでしょうか。
ミールを苫小牧市が所有する前は、岩倉建設株式会社が所有していました。市制施行50周年の1998年に寄贈されました。
ではその前は? 1989年10月27日、名古屋で開催された世界デザイン博覧会で展示されたミール予備機を、宇宙関連企業の堀江企画がソ連から購入したのが日本に持ち込まれた始まりでした。
ソ連としては、経済的に混乱状態が続いていたので外貨獲得したいという思惑があり、日本の企業に売却されました。その後、1年後の1990年11月29日、札幌市の岩倉建設が買い取りました。
岩倉建設とソ連や苫小牧との関係は?というと、苫小牧市長・岩倉博文氏は当時日本青年会議所副会頭。ソ連との外交を扱っていました。そして岩倉建設の役員だったこともあります。
そんな縁から、北海道博覧会等に展示された後に1998年10月12日に苫小牧市に寄贈されました。そして1999年12月11日にミール展示館が科学センターに併設されました。そうした経緯で、苫小牧にミールがやってきたというわけです。
苫小牧市科学センター「ミール展示館」
所在地:北海道苫小牧市旭町3丁目1番12号
電話:0144-33-9158
開館時間:9時30分~17時
入場料:無料
(※本稿は2009年11月11日に掲載した記事を再編集したものです)