雪国ならではの技術で、国内初どころか「世界初」をもつ北海道です。
それは、雪氷を冷熱エネルギーとして利用するという技術です。つまり、
冬に積もる雪を春から夏に貯蔵しておき、夏に冷房として利用するという、
画期的なシステムです。
全国でも、雪冷房エネルギーを活用している地域はいくつかあります。
空知・石狩管内を中心に道内各地にもあります。中でも、最も有名なとこ
ろといえば、この分野で先進地として知られる特別豪雪地帯の美唄市(び
ばいし)でしょう。ここには「世界初」があります。
世界初!の雪冷房マンション!
美唄市にはいくつもの雪冷房施設がありますが、中でも最も注目されて
きたのは「雪冷房マンション」でしょう。集合住宅やマンションとしては
世界初でした。以下のような流れで雪を貯蔵します。
2.雪解け(春先)に貯雪庫の大きな扉を開け、ロータリー車を使って中
に入れる
3.貯雪庫内で夏まで保存
4.夏に少しずつ雪を解かしマンション内の冷房に利用
冷水循環式雪冷房の仕組みは、貯雪庫内の雪を解かした冷水により不凍
液を冷却。それをマンション内各戸に循環させ、冷房の役割を果たすとい
うもの。冬季には、真空式ヒーターを利用して温水暖房にすることも可能
です。
メリットがいっぱいの雪冷房
雪国では、除雪した際の雪捨て場にも困るわけで、厄介者とされる「雪」
ですが、無料で降ってくるものですし、空気洗浄(ほこりなど吸収)、マイ
ナスイオン効果もあるので、クリーンなエネルギーです。
第一のメリットは、環境面で良いこと。さらに、省エネにもなります。
夏季の通常のエアコン冷房に要する利用料金の3分の1程度の電気料金だけ
ですむということで、経済的でもあります。設備費用は高いですが、耐用
年数も40年ほどで、3分の1の経費とのことで、総合的に見れば安上がりと
なるようです。排雪費用削減にもなります。考えようによっては再利用も
可能です(カスケード利用と呼ぶ)。
※世界初の雪冷房マンション「ウェストパレス」(美唄市西5条南1)。
茶色の概観で、1999年夏に完成。鉄筋コンクリート6階建で2LDKが24戸。家賃は割高。貯雪庫には109tの雪を貯蔵可能(面積8m×7.6m、高さ4m)。
他にも雪冷房いっぱい!沼田町にも世界初!
これらは産官学による「美唄自然エネルギー研究会」の取り組み。美唄
では他にも、JAびばいの国内最大級の玄米貯蔵倉庫「雪蔵工房」、「ピパ
の湯ゆ~りん館」が、雪冷房を採用しています(雪冷房マンションと同じ
システムとは限らない)。
そんな雪冷房施設が多い美唄市ですが、ヒントとなったのは同じ空知管
内の沼田町。沼田町でも雪利用では世界初となる米低温貯蔵施設「スノー
クールライスファクトリー」が1996年に誕生しています。この町から生ま
れたブランドとして「雪中米」があります。
まだまだ普及を目指して研究が続けられており、今後もそういった施設
が増えてくることでしょう。