日本のロンドンと呼ばれる霧の町「釧路」

道東最大の都市釧路市及び周辺は霧が多いことで有名です。世界的に見ると、霧が多い町として知られているのはロンドン、サンフランシスコなどがありますが、それに匹敵するとして「日本のロンドン」と呼ばれています。

釧路は霧の町!

実は釧路だけでなく、道東の太平洋岸沿い、つまり、えりも岬から釧路市を経て釧路管内浜中町(さらには納沙布岬まで)に至るまでの海岸線で霧が多く発生します。この海岸線の道路を海霧街道と呼びます。しかし特に釧路は濃霧で有名です。霧のイメージがある釧路です。夏は日照時間が全国一短い都市のひとつです。

釧路市では、霧が発生する日は年間100日程度です。実は最近、特に2003年以降は毎年100日を切っている状況が続いています(2006年現在)。1950年までは、120日以上あった年も2年に1度程度の割合であったそうですが、徐々に減少、ここ最近では100日を越えるという年は滅多にありません。海氷面積が関係しているのではないかともされています。

霧が発生しやすいのは主に夏季。3月頃から増え始め、4月には約10日、5月は15日弱、6月~8月は20日弱、9月は15日弱、10月、11月と減少します。最も霧が多いのは7月で、月の3分の2(20日ほど)が霧で覆われるということになります。5、6、8月はそれぞれ月の半分(15日ほど)が霧です。国内のほかの都市を比べても霧発生日は約20倍です。

海からやってくる海霧のほかに、川からの蒸気霧などもあります。このように、釧路の夏は霧に閉ざされる天候が多いため、湿度が高く、冷涼な気候となります。釧路湿原を含め近くの観光名所は夏は霧が多いということで、観光に行くと残念な結果に終わることも珍しくありません。

冬は?というと、からっと晴れることが多いため、非常に寒く乾燥しています。そのため、夏は確かに太陽の照りは少ないですが、年間で見ると日照時間合計は札幌のそれよりも長いという統計があります。霧に覆われているから暗い町だ……ということにはなりませんので注意。

なぜ釧路で霧が多い?

なぜ釧路など太平洋岸沿いで濃霧が多いのでしょうか。それは海流が関係しています。学校でも習う「親潮(寒流:北から南へと向う)」と「黒潮(暖流:南から北へと向う)」。この2つの海流がぶつかるところが三陸沖以北で、釧路にも近いということがまずあげられます。

さらに、日本列島の東側に張り出す太平洋高気圧による南から来る南風の影響です。この高気圧から時計回りで風が流れるため、釧路に到着するころには風は南風となっています。

大まかに言って、以上の「親潮」+「黒潮」+「太平洋高気圧からの南風」。これらの作用によって海霧が釧路に押し寄せます。
1.夏になると太平洋に太平洋高気圧が張り出す。
2.太平洋高気圧からの風が黒潮の上空を通るため温かく湿った風に。
3.2の風が北上、今度は親潮の上空を通るため急激に冷やされ霧が発生。
4.海霧はこの風に乗ってそのまま北上、釧路に押し寄せる(移流霧)。

霧が多いから……

よくいわれることですが、釧路湿原は釧路市という都市が近くにありながらも開発されずに自然が残されてきました。これはひとえに霧のおかげとされています。本来なら湿地帯は稲作に適しているので水田に転用されそうですが、霧・冷涼・日照時間が少ないため稲作には適さないというわけです。

夏も釧路港は大忙しです。しかし霧が多いため、漁船などの航行は細心の注意が必要です。釧路市郊外には釧路空港がありますが、大丈夫でしょうか。実は1995年までは霧を理由とする欠航が多かったわけですが、同年10月、ILS(計器着陸装置)カテゴリーIII-aを開始(2006年4月III-b開始)、安全に離着陸ができるようになっています。

環境省は2001年10月末、かおり風景百選に、潮のかおりのする風景とした釧路の海霧を選定しました。この霧を特産品として楽しむためのイベントも釧路市では毎年元気に開催されています。「くしろ霧フェスティバル」といいます。

濃厚な霧が包む釧路の町もいいものです。有名なのは、中心部近くにかかる幣舞橋(ぬさまいばし)で、霧にかかった幻想的でロマンチックな風景は、絵葉書などでも紹介されてきました。