道南の七飯町にひっそりと建つ、知る人ぞ知る神社。大沼国定公園にある駒ヶ岳神社です。小さな鳥居と祠だけの神社にあって、ひときわ目を引くのが境内に鎮座する巨大な岩。
実は、この岩こそが密かなパワースポットとして注目されているのです。さっそく取材に向かった北海道ファンマガジンですが、取材から数日後、思ってもみないことが起きました。その顛末も含め、ご紹介していきましょう。
駒ヶ岳神社の起源と大岩の誕生
駒ヶ岳神社の起源は、1640(寛永17)年にまで遡ります。その年の6月、駒ヶ岳が大噴火を起こし、周辺地域に甚大な被害を与えました。噴火は大きいものから小さいものまで数十年ごとに繰り返され、1914(大正3)年、総山の鎮守として地元の有志たちによって奉安祭典が行われました。これが駒ヶ岳神社のはじまりだと言われています。
▼駒ヶ岳神社と、その左横にある大岩
祠に隣接する大岩は、まさに1640(寛永17)年の大噴火によって誕生したとされています。溶岩噴出によって落下した石やガラス状になった火山灰が溶け合ってできた、全国的にも珍しい溶結凝灰石です。
▼巨大な岩には大きな割れ目が
こちらの岩も有志たちによって整備され、中央の洞窟内に出入りできるようになりました。
▼洞窟の入口付近
この洞窟を通り抜けることで難関突破のご利益があるとされ、登山の安全を願う人や安産を願う人など、多くの人が祈願の対象として利用してきました。北海道ファンマガジンでも、以前、マンガによるレポートを掲載したことがあります。
▼神秘的な洞窟の内部
駒ヶ岳神社は道路脇に建っているため、駐車場はありません。車で訪れる人は、近くの「大岩園地」看板向かいに駐車して少し歩くことを観光協会ではおすすめしています。
残念! なんと取材後に落石発生
いつもならここで記事を締めくくるところですが、取材後に思わぬ事態が発生しました。なんと、取材からわずか5日後の2018年10月22日、洞窟にて落石が見つかったのです。そのため、洞窟内はおろか、大岩周辺も立ち入り禁止となりました。
▼以前からの立ち入り禁止表示(写真中央)に加え、新たな表示(写真左端)が
大岩はもともと崩れやすい上、度重なる台風や地震の影響もあり、大変危険な状態になってしまったようです。今後、通行再開のメドは立っておらず、補修するのか、崩れやすい部分を削るのかといったことも未定なのだそう。
▼大岩の周辺にあった遊歩道も立ち入り禁止に
落石発生の一報を受け、再び北海道ファンマガジンが駒ヶ岳神社を訪れたのは、10月24日のこと。数カ国語で記された「立入禁止」の表示が、事態の深刻さを示しているようでした。大岩の洞窟を通行できなくなったのは非常に残念ですが、それより何より心を奪われたものがありました。美しい紅葉です。
ほんの一週間前に取材に訪れた際にはまだ色づいてなかった木々の葉が、赤や黄色に染まって鮮やかな景色を描き出していました。洞窟を通り抜けできなくても、駒ヶ岳神社が古くから人々の心の拠り所であったことに違いはありません。そんな当たり前のことを、紅葉からそっと教えられた気分でした。
大沼公園を訪れたなら、ぜひこの駒ヶ岳神社にも足を延ばしてみてください。そして最後に掲載する動画で、せめて通り抜けする気分を味わってみてくださいね。
【動画】駒ヶ岳神社と大岩
所在地:北海道亀田郡七飯町東大沼