北海道は江差町の市街地沖に、かもめ島と呼ばれる島が浮かんでいます。南北に細長く伸びるその姿は、まるで天然の防波堤となって江差の港を守っているかのようにも見えます。現在は檜山道立自然公園の特別区域に指定されていて、散策路も整備されています。
歴史的な見どころもたくさん存在するかもめ島へと、いざ、歩いて渡ってみましょう。
かもめ島に点在する文化財いろいろ
▼かもめ島方向から江差の町並みを見る
かもめ島は海抜20m、周囲約2.6km。まさに江差のシンボルとも言うべき、美しい小島です。2017年4月28日に日本遺産として認定された江差町のストーリー「江差の五月は江戸にもない-ニシンの繁栄が息づく町-」に盛り込まれた文化財のひとつにかもめ島が入っていることは、以前ご紹介した通り。
▼島に設置された地図も参考に
江差の市街地からかもめ島へは歩いて渡ることができ、一周ぐるりと歩いてみても1時間程度です。島には前述した日本遺産の文化財がいくつか点在しているので、さっそく見ていくことにしましょう。
▼瓶子岩
かつてニシン漁が盛んだった江差に伝わる「折居伝説」の中に出てくるのが、この「瓶子岩」。かもめ島に入ったらすぐ右手の方向に、真っ赤な鳥居と共に見えてきます。
▼北前船係船柱及び同跡
瓶子岩を右手に見ながら、北へと進むと、大きな杭を打ったような「北前船係船柱及び同跡」があります。これももちろん、文化財のひとつ。
▼かもめ島の階段跡
「北前船係船柱及び同跡」のすぐ近くに真新しい石段があるのですが、そのすぐ横にうっすらと階段のようなものも見受けられます。これが「かもめ島の階段跡」で、後ほどご紹介する「厳島神社」へ参拝するために、江戸時代へ設けられたものです。
▼江差商人の宴席跡
かもめ島の沿岸を散策路に沿ってぐるり歩いていくと、北西に「江差商人の宴席跡」が見えてきます。ニシン交易で利益を得た商人たちが、宴のためにここに仮小屋を建てたのだとか。なんとも豪快な話です。
▼厳島神社と厳島神社の石鳥居
島の内部へ少し入ると、1615(慶長20)年に創建された「厳島神社」があります。航海安全を祈願したとされる神社で「厳島神社の石鳥居」と共に文化財に含まれています。
▼厳島神社の手水石
境内にある「厳島神社の手水石」もまた、文化財のひとつ。1859(安政6)年に造られ、ニシン交易船関係者が寄進したとされているものです。
他にも歴史を感じさせる見どころが
日本遺産のストーリーに盛り込まれた文化財の数々をご紹介してきましたが、かもめ島にはこれ以外にも見どころがいろいろあります。
▼鴎島灯台
かもめ島の西側にあるのが、どことなくロマンチックな雰囲気の漂う「鴎島灯台」。夕陽の美しい時には白い外壁がうっすらと赤く染まり、記念撮影スポットとしてもおすすめです。
▼江差追分の功労者
前出の「厳島神社」境内の向かって左側に位置するのが「江差追分の功労者」の銅像です。独特の哀愁を帯びた江差追分は、ニシン交易の船乗りたちによって信州から伝わってきたとされています。
▼松前船飲用井戸
かもめ島への船の出入りが多くなると、船乗りたちは水の確保に苦労しました。島には水がなかったからです。そこで1876(明治9)年、莫大な私財を投じて井戸を造ったのが、江差の問屋であった村上三郎左右エ門でした。「松前船飲用井戸」は現在、町指定の文化財にも認定されています。
▼馬岩
かもめ島の東側、えびす浜に面した岸壁に、白馬のような姿をした岩があります。かつて源頼朝に追われた義経が、江差に身を寄せた時期がありました。再び江差を離れる際、どうしても船に乗せることができず、別れを惜しんで残していったのが白い馬でした。
▼どこか悲しげにも見える馬岩
馬は来る日も来る日も義経の帰りを待ちわび、とうとう岩と化してしまったという伝説があり、馬岩は確かに白い馬が悲しげにいなないているようにも見えます。
かもめ島には、こうした歴史や伝説にまつわるものが数多く残されています。ゆっくりと散策しながら、歴史に思いを馳せてみるのもいいかもしれません。
【動画】かもめ島を一周してみた(ドローン映像含む)
取材協力
所在地:北海道檜山郡江差町字中歌町193-1
電話:0139-52-1047