日本最古のオルガンが北海道岩内町に現存!実際に弾いてみた

岩内郡岩内町にある「岩内町郷土館」に、現存するオルガンで日本最古のものがあるという噂を耳にしました。それも、ただ現存し展示されているだけでなく、実際に音が出るらしいのです。

さっそく、オルガンを取材するため岩内町郷土館に行って来ました。そこには、単に音が出るというレベルではなく、演奏できるまでに修復、調律されたオルガンが展示されていたのでした。

日本最古と判明したきっかけ

岩内町郷土館のオルガンは、1905(明治38)年製の西川オルガン(横浜)です。岩内町郷土館が開館した翌年の1972(昭和47)年に、東京以北最大級の木造大仏があることで有名な寺院「帰厚院」(岩内町)から寄贈されました。

▼郷土館には修復前の写真も展示されている

それまで最古と言われていた国産オルガンは、横浜開港資料館収蔵の1909(明治42)年製西川オルガンで製造番号は「42106」でした。

一方、岩内町郷土館に寄贈されたオルガンの解体修復を行った際、リードボックスや鍵盤に記されたサインが発見されました。それによると、このオルガンは、1905年製で製造番号「37803」だということがわかったのです。これまで最古と言われていたオルガンより4年も前に製造されたものでした。

▼郷土館に展示されている解体修復時の写真

このオルガンは、にしん場の親方が娘のために購入したものでした。見つかった契約書を見ると、1912(明治45)年3月10日に帰厚院との間に売買契約が結ばれています。ちょうどにしん漁がはじまる時期だったこともあり「にしん漁の費用として売られたものだろう」と岩内町郷土館館長の坂井弘治さんはおっしゃいます。

「契約書には、売値50円と記載されていますが、まず受け取ったのは40円だけでした。もし、その年のにしん漁が豊漁だった場合には残りの10円と、さらに15円をプラスして、計25円を少年会に寄付するという取り決めになっていたようです。にしん場の親方のプライドが見えますよね」

ちなみに、その年の岩内のにしん漁獲高は2万6千石、まれに見る不漁だったそうです。

▼にしん場の親方と帰厚院との間でかわされた契約書

誰もが気軽に触れることに驚き

帰厚院より寄贈されたこのオルガンは、2000(平成12)年に半年かけて解体修復が行われました。現在では、年に一度調律し、いつでも演奏することができる状態が保たれています。

驚くのは、郷土館を訪れた誰もが弾くことができるということ。「最近の子どもさんは足で踏むオルガンを知らないので、昔のオルガンはこうやって弾いていたのだということを知ってほしいです」と坂井館長はおっしゃいます。

▼修復時に書かれたメモ

毎年11月中旬ぐらいの土曜日か日曜日に「郷土館いぐべコンサート」が開催されます。プロの奏者による演奏が聴きたいならこの日がチャンスです。

ピアノとはひと味違うノスタルジックな音色は、オルガンならではの味わいに満ちています。112年前のオルガンの音色に思いを馳せてみませんか。

▼岩内町郷土館 ぱとりあ岩内

岩内町郷土館 ぱとりあ岩内
所在地:北海道岩内郡岩内町字清住5-3
電話:0135-62-8020
開館期間:4月上旬~11月下旬
開館時間:9時~17時
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)
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