北海道の普段関わることのできないような素敵な情報がたくさん集まる秘密基地のような場所、それが「ひみつキッチン」です。
また、ひみつキッチンでは、北海道との魅力的な関わり方を実践している方々をゲストに迎えた、オンラインイベントを開催しています。
今回司会を務めたのは、札幌オオドオリ大学学長である猪熊梨恵さん。落ち着いた語り口がとても素敵です。
オンラインで参加している人々は、トークを楽しみながら、チャットで質問することもできます。猪熊さんから、
「質問はトーク中も受け付けています、名前も出ないので安心して書き込んでください」
とのアナウンスが。ひととおりの説明の後、いよいよゲストの登場です。
今回のゲストは、株式会社haku代表の菊地辰徳さん。千葉県船橋市出身で、現在は白老町に移り住んでカフェバーのあるホステルを開業しつつ、イベントの企画や、馬を活かしたコミュニティづくりなどに励んでいます。
そんな菊地さんをゲストに迎え、テーマは「文化と人とのつながりが生まれるホステル」。まずは菊地さんのプロフィール紹介からトークがはじまります。
「昔から自然と動物が好きで、それが人為的に失われていっているという事実を知った時に、どうにかできないかと。そこで大学で環境学を学ぼうと探したんですが、当時の日本にはまだ少なくて、それなら環境学の盛んな米国の大学へ行こうと思いました」
のっけからスケールの大きな菊地さんの話に、つい引き込まれます。大学卒業後はアメリカと日本で環境/CSRコンサルトの仕事をしながら、馬術大会に出るほど乗馬にものめり込んでいったそう。しかし、コンサルト業はいわば黒子の仕事、いつかは自分自身の現場を持ちたいと思うようになっていきます。さらには馬と一緒に暮らせる環境も求めて、東京から岩手県へ。画面上には、当時の写真も映し出され、今より若い菊地さんと、赤ちゃんを抱いた奥さまの写真に思わずほっこりさせられます。
そしてその数年後、今度は北海道白老町との関わりをきっかけに移住することに。
「馬に導かれて白老に来たんです」
と菊地さんが語るように、なるべく自然な状態で馬を飼いたいという思いが、不思議な縁を生み、白老町へと続く扉を開いたようです。
今回のトークショーで、「なぜ白老町だったのか」と思った参加者がいたとしたら、きっとより前のめりになったであろうエピソードがここから続きました。10年間ずっと閉館されていた「柏村旅館」と出会い、リノベーションしようと決意した話。地域の人の思いも踏まえつつ2019年に「haku hostel + cafebar」を開業した話。岩手から連れてきた2頭の馬を飼うための牧場を見つけたら、その屋根裏から大量の木彫りの熊を発見した話。それが縁で企画展を開催した話。画家の奈良美智さんを招いてイベントを開催したら、海外からも問い合わせの電話が入った話……。
さまざまな出会いによってホステルと馬とアートに関わっていく菊地さんの、数々のエピソードがどれも面白く、あっという間に時間が過ぎていきました。
気がつけば残り時間も少なくなってきたところで、チャットに書き込まれた参加者からの質問コーナーへと移ります。
「東京やアメリカから友だちは遊びに来ますか?」
「もともとお客さんだった人が、その後もhakuや白老町に関わるようになったことはありますか?」
など、いくつかの質問に答えていく菊地さん。司会の猪熊さんから、
「逆に皆さんに質問です。今日、hakuや白老町に興味を抱きましたか?」
と問いかけると、ほとんどの人が「はい」と回答。これには菊地さんもうれしそうな笑顔を見せていました。
最後に、今回のトークの大事なポイントを「今日のレシピ」として菊地さんにまとめてもらいます。
「美しい風景をつくっていきたい、と思っています。美しい風景とは自然にとどまらず、町、人、それに料理であるかもしれません。そんな美しい風景に惹かれて、人は訪れてみたいと思うはず」
hakuの今後がますます楽しみですね。