山の斜面に巨大文字が刻まれている!冬にしか現れない日高町の珍景

日高町の本町地区の山の斜面に、冬にしか見られない巨大文字があるのだそう。一体どういうことなのでしょうか? そして、どんな文字が、なぜ刻まれているのでしょうか? 実際に現地を訪れました。

市街地からはっきりくっきり! その正体は……

道の駅樹海ロード日高がある日高町本町。市街地に到着して周囲の山を見渡してみると、西側の山の斜面に文字のようなものを発見! でも町の中だと、住宅や構造物が視界を遮り、きれいには見えません。そこで、日高町本町の市街地で最も高い建物と思われる日高山脈博物館の4階展望台へ。

▼日高山脈博物館

▼日高山脈博物館4階展望台からだとはっきりくっきり見える

さらに、市街地を避けて、日高国際スキー場方面に向かってみると、沙流川に架かる橋の上からも、はっきりくっきりと見えました。日高らしい山と川、豊かな自然に、日高であることを示す人工文字がアクセントになっています。

▼道道847号線の沙流川に架かる橋から

山の斜面に刻まれた巨大文字は、「ヒダカ」と読めます。地図を見てみると、市街地の西にある山、銀嶺山(標高722.8メートル)のようです。なぜ、この山の斜面に巨大文字を描くことになったのでしょうか。日高町役場経済観光課に話を伺いました。

巨大文字の理由

話は30年ほど前、1987年~1988年にさかのぼります。当時、日高町には6軒もの製材工場等を擁する林業の町でした。そこで町は、日高が林業の町であることをアピールしようと、山の斜面に文字を刻む森林インフォメーション事業を実施。産業PRにとどまらず、観光PRという側面もあったのではないかと担当者は語ります。

選ばれたのは、日高町市街地からよく見える銀嶺山でした。1989年、標高500メートルほどの斜面に「ヒ」「ダ」「カ」のカタカナ3文字が浮き立って見えるよう、すでに生育していた広葉樹の下に6万本の針葉樹を植樹しました。手伝ってくれたのは、地元中学校の生徒たち。文字のサイズは一辺が50メートルほどといい、市街地からも下からも見えるよう、パースを引いてデザインしたと言います。

当初は通年で「ヒダカ」の文字が視認できる計画でしたが、思わぬ誤算がありました。広葉樹が傘になって、植樹した針葉樹が順調に育たなかったのです。30年近くが経過した今、本来なら10メートル以上の高さになっているはずですが、実際は3~5メートルと成長は遅いとのこと。そのため、広葉樹が落葉する12月から翌年4月中旬くらいまでの冬季に限って見られるようになってしまったのだそうです。

しかも、冬季でも毎日見られるわけではありません。吹雪など天候が悪いときは見られませんし、天候が良くても前日に大雪が積もっていれば、はっきりと文字を見分けることは難しいことも。冬季に文字がはっきり見える確率は五分五分なのです。

また、木の成長が遅かったことにより、「ダ」の払いの部分が見えにくかったり、「カ」が尾根にあるために見えにくかったり、細かいところで難点と言える部分があると言います。

そして現在……

「ヒダカ」の文字の下までは道なき道があり、地元の方が登ることもあるそう。保安林のため、改良を理由として土地に手を入れることはできず、笹を刈ったり枝打ちをしたりする程度。こうしたメンテナンスのため、役場職員やNPO法人沙流川愛クラブのメンバーが中心となってボランティアで活動をしています。

日高の国道を通る人たちの中には「ヒダカ」の文字に気がつく人も。「構造物かと思ったら木で作っていたんだ」と驚く人もいるそう。

冬にしか見られない「ヒダカ」は、道東自動車道をあえて利用せず、下道で日高本町を通るときに確認できるはず。通るときはぜひ目を凝らして探してみてください。