函館と言えば、函館山からの夜景写真などでよく目にするキュっとくびれた地形でおなじみ。実は、函館の最もくびれた部分は幅約1kmしかないので、少しの時間と体力さえあれば函館の東西横断を達成できます。
そこで今回は、その名も「1キロ通」を歩いて最短の函館横断に挑戦してみました。
「1キロ通」は、函館市水産物地方卸売市場(通称 魚市場)と栄町を結ぶ市道の名称。今回は金森赤レンガ倉庫などの観光スポットにも近い、函館市水産物地方卸売市場側からスタートすることにしました。
▼函館市水産物地方卸売市場
ここは、近海から水揚げされた魚介類が集まり、競りにかけられる場所。函館朝市で食べる海鮮丼の具材も、居酒屋でいただくお刺身やホッケの開きも、元をたどればここを経由していることが少なくありません。
事前に申し込むと競りを見学できる場合があるほか、場内の食堂は部外者でも利用できますが、それ以外は基本的に関係者以外立ち入り禁止となっています。建物にふさがれて海(函館湾)が見えないのは残念ですが、建物のすぐ裏から吹いてくる潮風で海の気配を感じながら1キロの旅をスタートしましょう。
(1) スタート地点
(2)『PとJK』ロケ地
最初の信号の手前右側に、コンクリート造りの巨大な倉庫があります。実はここ、映画『PとJK』で土屋太鳳さん演じる歌子が不良たちにからまれてケガをしたシーンのロケ地。倉庫と倉庫の間のごく普通の通りが、劇中では不良たちのたまり場として登場しました。
(3) はこだてビール
スタートしてすぐに一休み。地ビールレストラン「はこだてビール」に寄り道してみます。地ビールに漬け込んだ「社長のよく食べるジンギスカン」に、ブルーキュラソーのさわやかな青色が夏にふさわしいビアカクテルをオーダー。
ここでしか食べられない「はこだてビール味のソフトクリーム」も見逃せません。このソフトクリームは、アルコールが入っているため未成年者は食べられないという本格的な一品。意外にもビールくささはなく、焼きたてパンのような香ばしさが感じられます。
(4) 大漁旗の絵付けを見学「加賀谷旗店」
1キロ通と交差する通りを少し進むと、下見板張りの外観がひときわ目を引く「加賀谷旗店」が見えてきます。ここは、道内でも数少ない染物屋の老舗。1897(明治30)年に創業し、大漁旗やのぼり、のれんなどをすべて手作業で作り続けています。お店に声を掛けると、快く作業風景を見学させてくれました。
この日は、色を付けたくない部分に「真糊」を乗せていく作業中。真糊はでんぷんと米ぬかから作られていて、染めた後に水で洗い流すとその部分だけが染まらずに白く残ります。ちなみに、大漁旗は個人でもオーダー可能。近年はインテリアやプレゼント用として注文する人も少なくないそうです。
(5) 函館市電 魚市場通電停
(6)「1キロ通」案内標識
ホテルショコラの斜め向かいに、「一キロ通」と書かれた案内標識があります。かなり高い位置にあるので、このように反対側の歩道から記念写真を撮ることをお勧めします。
写真を撮った位置から歩いてきた方向を振り返ると、このような景色が見えます。右手にある大きな建物がホテルショコラです。
(7) さかえ通グリーンベルト
「一キロ通」の標識を過ぎて間もなく、広い中央分離帯のある道路と交差します。道路の名称は「さかえ通」。中央分離帯には何本もの木が植えてあり、ブランコまであってミニ公園のような雰囲気。
実はここ、函館市の各所にある「グリーンベルト」と呼ばれる緑地帯のひとつ。風が強いために何度も大火に見舞われた函館市は、1934(昭和9)年の大火後に防火帯として広い中央分離帯を設けた道路を整備しました。その数は全部で15本あり、総延長は約14kmにも及びます。大火を2度と起こさないという当時の人々の思いのほどが伝わってくるようです。
グリーンベルト脇の歩道には、1934年の大火後に外国の消火栓を参考にして独自に設計した三方式の消火栓が設置されています。これも函館ならではの景色のひとつなので、ぜひ写真に収めておきましょう。
(8) お餅屋さんに寄り道してみよう
さかえ通を過ぎて次の信号がある交差点の右側に、「栄餅」というお餅屋さんがあります。べこ餅や串団子などが買えるので、ちょっと歩き疲れたら糖分補給のために立ち寄ってみるのもいいかもしれません。斜め向かいにはコンビニもあるので、水分補給もできますよ。
(9) 街路樹の黒松の下を通り抜けて
栄餅を過ぎたら、ゴールはもうすぐそこ。街路樹として点々と黒松が植えられていたり、両側から生えてきた芝桜や雑草に覆い尽くされそうになっているちょっと不思議な歩道を歩き、一歩ずつ海に近付いていきます。
(10) 1キロを踏破して函館最短横断達成!
1キロ通は、海岸沿いを通る「末広栄町通」にぶつかって終わりです。突き当りは津軽海峡。右手に函館山、左手に湯の川方面が見えるパノラマ風景を眺めていると、1km歩いた疲れもどこかへ吹き飛んでいくかのよう。岸壁に腰かけて波音を聞きながら、さっき買ったお餅や串団子を取り出してゆったりとくつろいでみるのもいいかも。常に観光客でにぎわうベイエリアや元町エリアとはまた違った、港町・函館の落ち着いた空気感がきっとあなたをとりこにしてくれることでしょう。
(モデル:野呂裕子)