数年前の春、筆者が北海道に引っ越してきて驚いたことのひとつが、道路状態の悪さでした。本州にいた頃には見たことがないほど、穴が開いていたりガタガタだったりツギハギが多かったり。走行している自動車も、そんな道路にタイヤを取られ、なんだか走りづらそうです。これが実は北国ならではの現象だと知るのは、しばらく経ってからのこと。一体、どういうことなのでしょうか?
どうして道路に穴が開くのか
▼こうした穴が至る所で見られる
穴があるガタガタ道が多く出現するのは、3月以降の融雪期。北海道ではニュースに取り上げられるほど、よく見られる現象です。
【動画】春の札幌道路事情
なぜこのようなガタガタ道ができるのか、寒地土木研究所に教えてもらいました。
▼時にはパンクの原因になることも
寒地土木研究所によると、こうした穴はポットホールと呼ばれるもので、放っておくと拡大することもあるのだそう。発生のメカニズムは複数の要因がありますが、大きく分けて2通りのメカニズムがあるようです。
ポットホール発生のメカニズム・その1
▼もともとアスファルト混合物層内で止まっているひび割れや欠陥部から……(資料提供:寒地土木研究所)
▼侵入した水が凍結融解を繰り返し、アスファルト混合物が脆弱化(資料提供:寒地土木研究所)
▼脆弱化した部分にタイヤの衝撃が加わり、小さなポットホールが発生(資料提供:寒地土木研究所)
▼層間の剥離を伴いつつ、ポットホールが拡大していく(資料提供:寒地土木研究所)
ポットホール発生のメカニズム・その2
▼もともと底面側よりアスファルト混合物層を貫通しているひび割れや欠陥部から……(資料提供:寒地土木研究所)
▼路盤内及び路床の浸水によって路盤層上面が泥濘化し、空隙や支持力低下が起こる(資料提供:寒地土木研究所)
▼さらに浸入した水の凍結融解作用により隆起や沈下を起こし、ポットホールが発生(資料提供:寒地土木研究所)
▼アスファルト混合物層全体が飛散し、ポットホールが拡大していく(資料提供:寒地土木研究所)
なるほど、やはり雪国ならではの厳しい気候条件が、ポットホールの発生と拡大を引き起こしているというわけです。
開いてしまった穴はどうするのか
さて、気になるのは、発生したポットホールをどのように埋めていくのか、ということ。北海道の道路は、国道は北海道開発局、道道は道庁または政令市、市道は各市町村と、管轄がそれぞれ異なります。今回は北海道開発局札幌開発建設部にお話を伺いました。
▼まずは道路状況を点検
ポットホールの発生状況を把握するため、まずは道路を点検して回ります。人の目で見て確認する、地道ながら大切な作業です。
▼ひとつひとつ、穴を埋める
発見したポットホールは、ひとつずつアスファルト混合物などで埋めていきます。またしても地道な、人の手による作業が続きます。
▼加熱して圧をかけ既設舗装に接着
最後の仕上げは、もともとあった舗装に流し込んだアスファルト混合物をしっかり接着させる作業です。アスファルト乳剤を散布し、加熱して圧をかけることで接着効果を高めます。こうして、たくさんあるポットホールが、ようやくひとつ埋まるというわけです。
考えてみれば当然のことなのですが、道路に開いた穴は人の手で埋めていくより他に方法がありません。雪が溶けた後、ゴールデンウィーク頃までにこうした作業を繰り返していきます。だから北海道の道路はツギハギが多いと感じたわけですね。北海道ならではの道路事情、道民なら当たり前のことですが、あまり雪の降らない地域の人にとっては改めて驚かされることばかりです。