普通なら通り過ぎてしまうに違いない。当たり前のように道路脇にたたずんでいるからだ。しかし、よーく見てみると、どこか普通の電柱と違う。そう、通常の電柱が円柱型なのに対し、これは四角柱のようなのだ。
そんな不思議な電柱は、函館市中心部、二十間坂を下った先の交差点付近にある。町名でいうと末広町で、ルネッサンス末広というマンションのすぐそばである。角ばった電柱は交差点角地に二本あることが分かるが、片方に案内板が設置されている。こちらが正真正銘の現存最古のコンクリート製電柱なのだ。
案内板によると、電柱のサイズは以下のとおりである。
高さ:10m
幅:底辺47cm四方、上辺19.5cm四方
つまり、この電柱は頂上に行くほど細くなる形状であることが分かる。頂上部に取り付けられている電線との接続部は現代の金属部品を取り付けているが、鉄筋コンクリート製である柱そのものには染み等も付いており、かなり古いのが見て取れる。では、この電柱はいつごろできたのだろうか。
案内板を見れば分かるが、この電柱は大正時代の1923年10月に建造された。当時函館地区の電気事業を行っていた函館水電会社の技師・葛西民也氏が建てた。同時期に旧北海道拓殖銀行函館支店が、当時としてはモダンな耐火性洋風社屋を(現在のマンションの位置に)建築するのに合わせて、二本の電柱も特別にコンクリート製としたとされている。木造円柱型電柱がメジャーだった当時として大変珍しいことだったが、函館で頻発していた大火対策としては最適だったと言えるだろう。
二本合わせて「夫婦電柱」。これが、建築当時からの愛称だった。しかし1971年、周辺道路の工事に伴って片方の電柱が撤去された。1996年にかつての夫婦電柱を復活させるべく同様のコンクリート製電柱を設置したが、こちらは日本最古とは程遠いといえる。訪れた際は、どちらが日本最古のコンクリート電柱かはきちんと見分けるようにしよう。
建築されて90年近くたった今も目立たず現役で活躍している「日本最古のコンクリート電柱」は、現在は観光地の一つとして知られている。大正時代からここに立ち函館の発展を見守ってきた電柱を見つけに行くのはいかがだろうか。
分かりにくいので場所を地図で示す。
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函館市末広町15
通年
※無料