ブラキストン線とは何なのか

 突然ですが、「ブラキストン線」をご存知でしょうか。あるいは「ブラ
キストン・ライン」と呼ぶ方もいますが。

 「北海道は日本じゃない」とささやかれる(あるいは大声で笑)ことが多
いのですが、それは気候の面、歴史の面、生活文化の面で違いを感じるか
らなのでしょう。確かに北海道は本州とはいろんな面で違いが顕著なんで
す。

 今回取り上げる「ブラキストン線」、実はこれも北海道と本州をわける
要素ということができます。聞きなれないという方もきっと多いかと思い
ます。ブラキストンって?


ブラキストン線とは!

 以下の2つのグループの違いを述べよ。と言われたらどう答えますか?

 Aグループ:ヒグマ、キタキツネ、エゾシカ、エゾリス
 Bグループ:ツキノワグマ、ホンドギツネ、ホンドシカ、ニホンザル

 そう、北海道に生息する動物と、本州に生息する動物(動物園除く)のグ
ループわけなのです。これがいわゆる「ブラキストン線」の考えです。北
海道と本州の間にある津軽海峡が、哺乳類や鳥類分布の境界線になってい
るのだそうです。

 ブラキストンとは?これは人名です。T・W・ブラキストン(Blakiston)はイギリス人
で、1832年生まれ。日本の鳥類は北海道と本州とでは違う!と気づき1880
年に発表しました。

 補足情報ですが、ブラキストン線以北は「シベリア亜区」、上の2つの
グループでいうとAグループの動物たち、それに対し線より南は「満州亜
区」という分類になっているようです。ま、難しいのですが、北海道はシ
ベリア亜区に属しているということですね。結論は……、

 Aグループ:シベリア亜区と呼ぶらしい、津軽海峡以北(北海道)。
 Bグループ:満州亜区と呼ぶらしい、津軽海峡以南(青森県以南)。

 ということになります。

他にもある動植物の境界線!

 ブラキストン線は一応わかりましたよね。他にも北海道がらみの生物学
的境界線には、宗谷(そうや)海峡の「八田ライン(線)」があります。これ
は主に、爬虫類(へびとか)や両生類(かえるとか)分布の境界線になります。
八田三郎が1910年に発表しています。

 「宮部ライン」は、北方領土の北端、ちょうど択捉島(えとろふとう)と、
それに続くウルップ島以北の千島列島との間にひかれた境界線です。植物
に関する境界線で、宮部金吾が発表しました。択捉島ではエゾマツやトド
マツなどが北限とされています(類似例として、黒松内町(くろまつないち
ょう)のぶな北限があります)。

 「河野線(河野本道ライン)」という、札幌と苫小牧(とまこまい)までを結ぶラインもある
ようです。これは昆虫類の境界線になります。

 こんなふうに、北海道のまわりには、たくさんの「ライン」が走ってい
るんですね。