オントレプ、サッチェプ、ムニニイモ。これらが何だかわかりますか?
実は料理です。名前だけ聞いても何だかわからないといえるでしょう。
ということで、今回はアイヌの伝統的な食事を紹介。その前に、アイヌの
狩猟収穫生活(春夏秋冬)について触れておきます。
狩猟収穫とアイヌの生活
春(トイタンネ=春が来たこと)。春になって最初にするのは「ハブラピ」
という木のカワハギ作業で、これを女性がします。イモ掘り、熊の巣の穴
にいる小熊の生捕り(マラプト=賓客)などが春の仕事。
夏は平地の夏の部落(サクコタン)で生活し、海や山で食材を調達しまし
た。山に行く際に使う「夏の道(サクル)」がありました。ハマナスの実を
収穫する月(マウタチュプ)、ウバユリを掘る月(キウタチュプ)などがあり
ました。
秋は収穫の大切な時期。家はサケやマスがのぼる川沿いの産卵場が多く、
サケやマスを主な食糧源としていたことが分かります。サケ漁の始まりは
「シベキキリ」と呼んでいました。ベッコウバエの出現がその始まりとし
ていました。
食材
さて、主食は前述のとおり「サケ(シペorチュキペ)」と「シカ(ユク)」。
こうしたものには「カムイ(神)~」という名前が付けられました。「カム
イチェプ」といえば、サケ、カレイ、ニシン、シシャモも含まれました。
イルカ、アザラシ、メカジキ、サメ、ニシン、カレイ、カジカ、コマイ、
ホタテ、ホッキ、コンブ、タチウオ、ウナギ、スケトウダラ
「ユクアッテカムイ」はシカを支配する神とさえていました。「ユケラ
ンヌプリ」つまりシカの降りる山が道東に、「ヨコウシ」つまり待ち伏せ
場所(鹿狩り名所)が日高に多くみられます。
動物性のサケやシカに対して、植物性のものもそれ以上に多く食べられ
てきました。たとえば、球根、地下茎、葉茎、山菜類、木の実があります。
今の時代のような西洋野菜はなかったので、自生しているものや、雑穀類
の耕作に頼っていました。
ヨモギの葉茎、オオウバユリの根、クロユリの根、コウホネの根、エンレイ
ソウの実、ザゼンソウ、ヒエ、アワ、キビ、豆類、ジャガイモ、ハマナスの
実、ハスカップ、ワラビ、フキ、ウド、セリ、カタクリ、ニリンソウ、エゾ
エンゴサク、ヒトリシズカ(薬用)、イナキビ、オオハナウド、ヒシの実、マ
タタビの実、ヤマブドウの実、コクワの実、キノコ類、クルミ、ホオノキ、
キハダ(シコロ)の実、ナギナタコウジュ
調味料も今のようにたくさんあるわけではないので、魚の脂を使ってみ
たり、海水も使っていたようです。また、冬に備えて保存食も作る習慣が
ありました。
代表的な料理
「ルイペ」 | サケやシカを凍らせて薄く切って食べるもの。 |
「メフン」 | サケの内臓の塩漬け |
「チタタプ」 | サケの骨を使ったタタキ料理 |
「シト」 | アワ・ヒデといった雑穀を使った団子。オオウバユリを使ったものは「トレプシト」。 |
「オントレップ」 | オオウバユリのカスを乾燥させた団子。 |
「サッチェプ」 | 干したサケ。 |
「オントレプ」 | 発酵させたオオウバユリの根。 |
「ラタスケプ」 | 野菜や山菜を煮て混ぜた料理。「ボツボツ」という イオマンテ料理はカボチャ、豆類、トウモロコシ、キハダ の実を使った混ぜ料理。「チポロラタシケプ」は蒸した ジャガイモをつぶしてチポロ(サケの卵)であえた料理。 「シケレペキナラタシケプ」は乾燥シケレペキナ(ヒメザ ゼンソウ)を使った料理。「シケレペラタシケプ」は、 キハダの実を使った料理。 |
「オハウ」 | 魚・昆布などのダシスープで、具材は野菜や山菜。イオマンテ料理として熊肉を使った「カムイオハウ」がある。 |
「コンブシト」 | 日高発祥の比較的近年の料理。 |
「ムニニイモ」 | 通称シバレイモ。「ムニン(発酵)」に由来し、凍らせ て発酵させたジャガイモをつぶして乾燥させ、焼いた もの。比較的近年の保存食。 |
「トノト」 | イオマンテなどで用いるピヤパ(ヒエ)の酒。 |
狩猟収穫に使う主な道具
「マレプ」 | サケを取る道具のひとつ。マレプイペというかぎ型の鉄製 部品が木の先端に取り付けられたもの。類似道具に「アプ」 |
「ラウォマプ」 | サケ・シシャモなどの川魚をとる籠受け。 |
「シノッポンク」「ペラアイ」 | ヤマメなどの川魚をとる弓と矢。 |
「タモ」 | シシャモをとる籠。 |
「ヤシヤ」 | 夜に漁業を行う際に使うすくい網。 |