北海道民におなじみのジンギスカン。北海道遺産に選定されている食文化です。そのジンギスカンの鍋にフォーカスした国内初、国内唯一の博物館「ジン鍋アートミュージアム(ジン鍋博物館)」が、2016年11月11日、岩見沢市栗沢町万字に正式オープンします。
約10年間で集めたジンギスカン鍋の数は日本一
「ジン鍋アートミュージアム」は、館長の溝口雅明さん(北星学園大学短期大学部教授)が収集したジンギスカン鍋コレクションを展示する私設博物館。溝口さんの実家であった溝口商店(1912~2001年営業)の店舗スペース(約16平方メートル)を活用し、旧国鉄万字線開通記念日である2015年11月11日に仮オープンしました。
溝口さんは、異業種交流仲間でジンギスカン研究の第一人者、北野隆志さんと出会ったことをきっかけに、2005年から古いタイプのジンギスカン鍋探索を始めました。溝口さん自身も旧溝口商店の倉庫を探したところ、希少価値の高いジンギスカン鍋を4枚発見したといいます。
▼旧溝口商店で見つかった貴重な鍋も
これ以降溝口さんは、インターネットオークションで落札、骨董品店で購入、提供を受けるなどしてジンギスカン鍋を集めてきました。2014年にはコレクション数50枚を達成し、公開場所として私設博物館を作ることを決定。仮オープン当初の収集枚数は83枚でしたが、この一年で145枚ほどに達しました。ジンギスカン鍋を収集している人はいますが、100超の鍋を所有する人は他にいないのだそう。
寄贈された鍋は錆ついていることが多く、その場合は自ら磨き上げます。ときには、収集した鍋でジンギスカンを実際に味わってみることも。溝口さんはこれを「動態保存」と呼んでいます。
こんなに姿かたちが違うのか!と驚くこと間違いなし
ジンギスカン鍋なんてどれも一緒にじゃないの? と思われたあなた。この博物館に行けば見方が変わります。
ジンギスカンのタレで有名なベル食品が配布用に製造した貴重な鍋、羊模様や葵の御紋が刻まれた鍋、4枚に分解できる鍋、長方形の鍋、深型の鍋、室蘭工業大学が作った北海道の形をした鍋など、これがジンギスカン鍋? と驚いてしまうものも。また、素材は鉄製が主ですが、真鍮製、アルミ製、陶器製までさまざま。サイズもさまざまです。
溝口さんによると、形は時代ごとに変わってきたといいます。昭和初期は屋外で七輪を使ってジンギスカンを楽しんでいたため、余分な脂は落ちて適度に火が通るよう、ドーム型の鍋には直線状または放射状のスリット(隙間)が付けられていました(ロストル型)。しかし1955年頃、ガスコンロの普及により室内でジンギスカンを楽しむようになると、スリットのかわりに溝のある鍋が普及することになります。
(※同博物館では、スリットがついている初期のロストル型の鍋を探しています)
驚くのは、中央がドーム状ではなく平坦になっているジンギスカン鍋。北海道内陸部では後年に味付けジンギスカンが登場したため、旭川周辺ではこのような鍋も登場したのだといいます。また、煙突付きの鍋があったことや、初期の頃は持ち手がなくハンドル(取っ手)が付いている鍋が一般的だったというのも驚愕の事実です。
このように、ジンギスカン鍋の歴史と変遷を学べるのが同博物館の特長の一つなのです。
ジンギスカン鍋はアートそのもの
こうしてジンギスカン鍋のデザインの変遷を見ていると、博物館を「ジン鍋アートミュージアム」と命名した理由が見えてきます。鍋の形状、紋様、デザイン、意匠などはまさにアートそのもの。食と学びとアートを融合する博物館にしていきたいと溝口さんは話します。
ジンギスカン鍋は有形資料、ジンギスカンは無形文化財です。家に眠っている4枚の鍋を提供してくれた人には、1枚は家で使ってと返しました。博物館としては古い鍋を収集はしますが、その鍋でジンギスカンを楽しむのが本来のあるべき姿。それを後世に残したい。それが溝口さんの思いです。
展示物を見たりお話を聞いていると、溝口さんのジンギスカン鍋への愛がジワジワと伝わってきます。新しくできた国内唯一のジンギスカン鍋の博物館、ぜひ足を運んでみてください。
▼ジン鍋アートミュージアム
所在地:岩見沢市栗沢町万字仲町8番地 旧溝口商店内
開館日・時間:4~10月末までの夏シーズン、原則土日。
入館料:無料。寄付は歓迎。
グランドオープン
2016年11月11日(金)10:00~17:00(地元の皆さん向け)
2016年11月12日(土)9:30~16:30(年内最終日の通常会館、11:30~持ち寄りジンパ開催、先着50名に特製「ジンギスカンクッキー」プレゼント)
詳細はfacebookページ参照