十勝ワインで知られる池田町ブドウ・ブドウ酒研究所は、今年2016年、十勝ブランデーの原酒製造を23年ぶりに再開した。今年初めて、池田町オリジナルのブドウ品種「山幸(やまさち)」を使ったブランデーを製造するという。
十勝ワインとほぼ同じ長さの歴史を持つ十勝ブランデー
池田町産の十勝ワインは有名だが、それに比べると十勝ブランデーの知名度は高くなく、製造していることも一般にあまり知られていない。しかし、十勝ブランデーは十勝ワインの歴史とほぼ同じ長さで、試験製造をスタートしてから約半世紀の歴史を持つ。同研究所は1963年に果実酒製造免許(ワイン製造免許)を取得しているが、翌1964年までにブランデー製造免許も取得し、ブランデーの試験製造を開始している。
なぜ池田町でブランデーかというと、もともと原料がワインと同じであることから。ブドウを醗酵させることで醸造酒(ワイン)ができ、蒸留させることで蒸留酒(ブランデー)ができあがる。
十勝ブランデーは、職員の研修先であったブランデーの本場フランス・コニャック地方の手法で製造。1978年にコニャック方式で十勝ブランデーを本格的に発売開始して以来、数々のブランデー商品を世に送り出し、1984年にはブルガリア・スランチェフ・ブリャグの国際コンクールで「十勝ブランデーX・O」が大金賞を受賞する快挙を成し遂げている。
23年ぶりに池田町産「山幸」で「十勝ブランデー」蒸留開始
同研究所は、1964年以来約30年間にわたり十勝ブランデーを製造してきたが、1993年のワインを蒸留した後に在庫過多状態となり、一度生産をストップすることになった。その後のブランデー製造は試験的に行う程度だったが、近年ブランデー人気が再燃したこと、現在1983年物を出しているが、在庫は1993年までしかなく10年を切っていること、販売が好調なブランデー仕込みの梅酒用の原酒を確保しておきたいなどの理由から、なお10万リットルの在庫はあるものの、23年ぶりに本格的にブランデー製造を再開することとした。
前年度は、町内で栽培するワイン用ブドウ品種「山幸」が豊作だったことから、今年度は原料のブドウ60tを4キロリットルのワインに醸造し、4キロリットルの原酒(8樽ほど)を製造する予定。樽での熟成を含め、完成まで少なくとも10年ほどかかるため、本年度に仕込んだものは、早くても約10年後のお披露目になる。
▼一般公開されていない貯蔵庫。二回の大地震で列が曲がってしまったが、現在もそのままにしている。揮発したアルコールが天井に届き黒カビを発生させている様子も見られる。(蒸留見学ツアーにて)
▼貯蔵庫で安井美裕所長が十勝ブランデーを解説。最後に製造された1993年物「清見」品種のブランデーと、40年以上貯蔵されているブランデーを比較すると、色と香りが異なることがわかる。(蒸留見学ツアーにて)
ブランデー蒸留見学ツアーも開催
このたびの23年ぶりのブランデー製造再開を受けて、クライメイト観光プランニング(札幌市、山岸奈津子代表)は、「ブランデー蒸留見学日帰りツアー」を企画提案、モニター企画として2016年4月30日に実施し、16人が参加した。
同企画では、池田町ブドウ・ブドウ酒研究所の全面協力のもと、ワイン城内のブランデー製造工場、旧研究所側のブランデー貯蔵庫やワイン地下貯蔵庫を見学したほか、十勝ブランデーのテイスティングとブレンド体験を行った。山岸さんは、今後も十勝ワインやブランデーの魅力を広められるようなイベントを継続提案していきたいと話している。
▼十勝ブランデー蒸留見学ツアーの様子。ブランデーブレンド体験も。(池田ワイン城にて)
▼池田ワイン城一階のショッピングエリア、無料試飲コーナーからはガラス越しで見ることのできるブランデー蒸留器奥にある樽。ここには、十勝産ミズナラの木を使って作ったワイン熟成樽もある。
▼旧研究所敷地内の一般公開されていない年ごとに分けて管理されている地下貯蔵庫、一般の方のワインを預かる十勝ワインマイセラー。ワイン城以外で、地下に貯蔵スペースがあることは一般にあまり知られていない。
<取材協力>
池田町ブドウ・ブドウ酒研究所、クライメイト観光プランニング