2014年にスタジオジブリが制作した長編アニメ『思い出のマーニー』。ジブリ作品として初めて北海道が舞台となったことは公式にも認めていますが、主人公の降り立った架空の町や岸崎別駅はどこなのかについては議論を呼んできました。このたび「江別・野幌 情報ナビ」は鉄道駅の専門家とともにモデルとなった駅はどこなのか徹底検証。その結果、モデルとなった駅の候補が絞られました。
北海道東部の湿原地帯が舞台のマーニー
『思い出のマーニー』は北海道東部の湿地帯が舞台の作品です。米林宏昌監督は主人公の杏奈とマーニーが出会う風景にこだわり、湿地帯の風景を求めて釧路、根室、厚岸等にロケハンを敢行しています。実在する北海道の美しい風景と架空の海辺の村が入り混じったファンタジー作品は、北海道民こそ観ておきたい一作です。
▼霧多布湿原(浜中町)
物語によると、主人公である12歳の佐々木杏奈は療養のため、住んでいる札幌から道東へ鉄道で移動することになりました。札幌駅の風景をはじめ、道東の湿原の風景が次々と映し出されます。
湿原の美しい海辺の村のモデルとなったのは浜中町・霧多布湿原や藻散布(モチリップ)沼、厚岸町・別寒辺牛湿原や厚岸湖ではないかと推測されています。特に潮の満ち引きで草の島々が浮かび上がってくる藻散布沼は「湿っ地屋敷」前のシーンで描かれています。入り江は厚岸湖では? ともいわれます。
主人公が降り立った駅はどこがモデルなのか
主人公・杏奈が降り立った駅は「岸崎別駅」。道内にこの駅名はありません。ですから架空の駅ということになりますが、ではどこがモデルなのでしょうか。その駅は道東であるに違いありません。
▼花咲線・茶内駅にとまるキハ54形
作中では、札幌駅で「特急スーパーおおぞら1号・釧路行」に乗って道東に向かったことが確認できます。降り立った駅では根室行きのキハ54形から降車しており、特急の終点である釧路駅で乗り換えたことが分かっています。
従って、釧路から釧網本線に向かったのではなく、花咲線・釧路~根室間のどこかに向かったことに疑問の余地はありません。その間では、唯一の有人駅で駅舎の形が似ている厚岸駅が最有力候補となります。そのため、舞台となった湿原も、霧多布湿原や別寒辺牛湿原など厚岸町・浜中町の湿原である可能性が高まります。
一方で、駅舎デザインのモデルとなると話は変わってきます。「江別・野幌 情報ナビ」が鉄道駅の専門家とどの駅がモデルになっているか徹底検証を行った結果、私見としつつ、道東のどの駅かは不明であるものの、駅舎の姿かたちはとある駅に似ていると結論付けました。その要点をまとめると下記のとおりです。
- 降り立った駅の特徴
- ・花咲線の駅で、終着駅ではなく途中駅である
- ・有人駅で駅員が常駐している
- ・相対式・2面2線ホームである
- ・砂利敷ではなくアスファルトの立派なホーム
- 厚岸・浜中周辺の駅の検証
- ・厚岸駅:駅舎も似ていて有人駅なので有力候補だが、跨線橋があるので違う
- ・糸魚沢駅:1面1線なので違う
- ・茶内駅:共通点はない
- ・浜中駅:共通点はない
- ・上記の条件にあてはまる駅は沿線に存在しない
- 道内全域に目を向けると
- ・留萌本線・石狩沼田駅では?
- ・ホーム構造と上屋と駅舎の構造が似ている
- ・駅舎、駅舎内、改札口は江差駅のほうが似ている
- ・旧江差線・江差駅では?
- ・ホームが非常に似ている
- ・駅舎の壁のタイルや電灯が似ている
- ・駅舎内、改札口は江差駅そのもの
- ・駅舎外観、風除室の構造が似ている
- ・駅前ロータリーの大きさや雰囲気が似ている
- ・駅を出て右手にコンビニ「セラーズ」があり看板の色も似ている
- ・ただしホーム構造は違う
- ・留萌本線・石狩沼田駅では?
▼ホーム・駅舎・駅前までことごとく酷似している旧江差駅
結果、『思い出のマーニー』で主人公が降り立った駅は花咲線(釧路~根室間)のどこかの駅であるものの、モデルとなった駅は花咲線どころか道東にもなく、2014年5月に廃止された旧江差線・江差駅である可能性が高いとしています。
アニメ作品であり、アレンジされた架空の駅ですので想像の域を出ませんが、みなさんも作品を観ながらそっくりかどうか確認してみましょう。