先日、高倉健さんが亡くなった。
高倉健さんは日本を代表する映画のスターともいっても過言ではない。
高倉さんは北海道がロケ地となる映画に多く出演し、北海道でこよなく愛されていた。
高倉さんが出演した北海道のロケ地映画といえば、夕張市などで撮影が行われた「幸福の黄色いハンカチ」(1977年)が筆頭に挙がる。この作品は日本アカデミー賞を獲得した作品である。そのほか、網走の名を一気に全国区に押し上げた「網走番外地」(1965年~)シリーズなどがあり、南は函館から北は稚内、東は別海に至るまで、そのゆかりの地は道内にも数多く存在している。
ではここで、高倉健さんが出演した主な道内ロケ映画を一挙ご紹介しよう。
「網走番外地」シリーズ(1965年~)
実際にあった囚人脱走計画事件がモデルになった作品。冬の網走市が舞台。網走駅で降ろされトラックに乗せられ護送された先の網走刑務所の、囚人による脱走計画にまつわるストーリー。主人公の橘真一を高倉健さんが務めた。思わぬ大ヒットで「続 網走番外地」「○○編」「○○の対決」などシリーズが立て続けに公開された。網走監獄は網走市を代表する観光スポットになっている。
「幸福の黄色いハンカチ」(1977年)
北海道にやってきてナンパする花田欽也と網走刑務所を出所してきた島勇作(高倉健)らが真っ赤なファミリアで道内をドライブしていく物語。釧路、網走、阿寒湖、帯広、夕張とストーリーは進む。終盤の夕張で、目印の「黄色いハンカチ」たなびくシーンは印象深い。このキーとなるロケ地は、想い出ひろばとして現在も残されている。
「遥かなる山の呼び声」(1980年)
道東の四季折々の映像も楽しめる、突然泊めてほしいと訪れた男と牧場を舞台にした映画。いまはなきJR標津線上武佐駅がロケ地の一つに。ラストシーンでは田島耕作(高倉健)が網走刑務所へ護送される美幌駅のシーンがあり、黄色いハンカチも登場。これが、1977年公開の映画「幸福の黄色いハンカチに」つながる設定。
「駅 STATION」(1981年)
オリンピック射撃選手でもある警察官と3人の女性の出会いと別れを描く映画。小樽市・銭函駅での別れのシーンのほか、増毛町・増毛駅前の風待食堂が登場。現在観光案内所として活用されている。当時、増毛から連絡船が出ていた陸の孤島・雄冬地区も舞台となっている。
「海峡」(1982年)
青函トンネル建設計画および工事にまつわる国鉄技師のストーリー。青森県・龍飛が主な舞台だが、函館も舞台の一つになっている。
「南極物語」(1983年)
エサもなく無人の昭和基地に置き去りにせざるを得なかった樺太犬15頭。1年後そのうちタロとジロの兄弟犬と再会を果たすという感動の名作。稚内市の抜海駅などでロケが行われ、稚内公園には、第1次南極観測隊の樺太犬の訓練が行われたことにちなみ、記念碑が建立されている。
「居酒屋兆治」(1983年)
函館で居酒屋を営む藤野英治(高倉健)夫婦の前に昔の恋人が現れ、それぞれの想い、人間模様を描く物語。
「鉄道員」(1999年)
架空ながら北海道にある廃止寸前のローカル線「幌舞線」終着駅、幌舞駅駅長・佐藤乙松と、ふと訪れた鉄道ファンの少女を中心に描く物語。現在その幾寅駅周辺はロケセットが置かれており、鉄道員の雰囲気をたっぷり楽しむことができる。
道内各地で臨時開館
高倉さんの訃報を受け、映画「幸福の黄色いハンカチ」のロケ地・夕張市では、
冬季休館に入ったばかりの「幸福の黄色いハンカチ想い出ひろば」を2014年11月19日に臨時開館(今月末まで開館)。
黄色いハンカチが掲げられ、たくさんのファンが訪れた。メッセージカードがびっしり貼られた「想い出の家」には、献花台も設けられた。
そのほか、「網走番外地」のロケ地・網走市にも献花台が設けられたほか、「駅 STATION」のロケ地・増毛町で臨時開館した観光案内所など、各地でたくさんのファンが高倉さんのご冥福を祈ったそうだ。
編集後記:北海道に愛され、北海道を愛した高倉健さんへ『ありがとう』
私自身、高倉健さんのことをテレビなどで拝見した際、謙虚で真面目な性格と非常に仕事にストイックだなという印象を受けました。高倉健さんは、北海道映画に出演するだけではなく、撮影後もそのロケ地と交流を続けていたといいます。人をとても大切にする人だなと感じました。
印象深いエピソードがここにあります。それは、高倉さんのファンだった人が直接手紙を渡したことから、それがきっかけとなり、文通、そして家を訪問する仲になったという話でした。文通の量はかなりの量。高倉さんの手紙の文章はパソコンでも、名前は必ず毎回自筆だったとか。この『温かみ』も、高倉さんが愛される理由ではないかと私は考えます。
こんなにも北海道に愛され、それと同時に高倉健さん自身も北海道を愛してくれていたのではないかと思います。
ご冥福をお祈りすると同時に、『ありがとう』という気持ちでいっぱいですね。歴史に残る北海道のロケ地、一度訪れてみたらいかかでしょうか。― 太田明里