乙部町で復活2年『しおトンコツラーメン 嶋』―口コミ広がり人気に!

【乙部町】かつて乙部町にあった店が10年以上ぶりに再開した『しおトンコツラーメン 嶋』。くさみのないクリーミーなトンコツラーメンが復活して2年弱たつ今、地元の人たちから広がった口コミで、遠方からも客が訪れています。

10年以上の時をへて乙部町で復活『しおトンコツラーメン 嶋』

2012年秋に営業を再開した『しおトンコツラーメン 嶋』。10年ほど乙部を離れて関東地方で仕事をしていた店主が、乙部での営業を再開したきっかけ、そしておいしさの秘密は? 夏の澄み渡る青空と日本海、個性的な岸壁が美しい景色を作り出している乙部町を訪ね、店主の寺嶋繁さんにお話を伺ってきました。

国道229号線(追分ソーランライン)を挟んで、乙部町役場と向かいに建つ店。道路に面した入り口は民家の玄関で、店の入り口は裏側になります。カウンター5席、テーブル3席のこぢんまりとした店内。昼食時には満員で、調理場と食堂を結ぶ壁の棚から、出来上がったラーメンを差し出す寺嶋さんの手がのぞきます。

▼お店の入り口は裏手

▼出来上がったラーメンが棚から差し出される

かつては焼き鳥屋。人気メニューだった「しおトンコツラーメン」

1989(平成元)年から10年ほど、焼き鳥店として存在していた同店で出していた「しおトンコツラーメン」。当時からくさみのないクリーミーなトンコツスープが人気でした。その後、スープ作りの腕を買われた寺嶋さんは、東京・御徒町のラーメン店にスープ作りを伝授しにいくために乙部を離れたため、店じまい。約10年間東京や埼玉でラーメン作りに従事した寺嶋さんは、2009年秋に乙部に戻りました。

▼店主の寺嶋さん

乙部町を10年離れた店主が、店を再開したきっかけは?

乙部に戻り、地元の人たちからの要望もありながら、お店の再開に踏ん切りがなかなかつかなかったという寺嶋さんの心を大きく動かしたのが、1つの運命的な再会。

ある日、自宅前で掃除をしていた寺嶋さんに、通りがかりの男性が声をかけました。かつて乙部に在勤していた頃に店を訪れた男性が、道東に転勤して何年もたった後、仕事で再び乙部を訪れた際に、懐かしい店主の姿に思わず声をかけたそうです。「またお店を再開しないのですか?またあのラーメンを味わいたい」。ブランクがあることから、そんな言葉に最初は戸惑った寺嶋さんでしたが、「やはり地元でラーメンを作ることが自分にできる仕事」と思い、お店の再開を決心したそうです。

「自分の味覚は信じない」と、試行錯誤を重ねた味

「東京や埼玉にいる10年で歳も重ねたし、自分の味は信用しない」と寺嶋さん。スープを作る過程でも、微妙な水加減や火加減などによって、味が様々に変わってくるといいます。そんなブランクによる以前の味との微妙な差を埋めるために、寺嶋さんは、当時のしおトンコツラーメンの味を知る人々に何度も食べてもらい、感想やアドバイスから、試行錯誤を重ねて味を作り上げていったそうです。

▼くさみのまったくない「しおトンコツラーメン」

▼柔らかい麺にスープがよくなじむ

メニューは「しおトンコツラーメン」と「柔らか煮豚丼」のみ

メニューは「しおトンコツラーメン」(700円。大盛100円増)と「柔らか煮豚丼」(400円)のみ。毎週水曜日は1日かけてスープの仕込みをするために休店。豚1頭から4本しか取れない貴重な丸骨を10時間煮込みます。くさみがなく、クリーミーでまろやかなコクを持ったスープは、しょっぱさを感じず、飲みほしてしまう客も多いそう。八戸市に本社を持つ『熊さん株式会社』の柔らかい麺にスープの味がよくなじみ、ラーメンに入ったチャーシューは、口の中でとろける柔らかさです。

このチャーシューを、焼き鳥屋時代の自家製タレをアレンジしたタレに漬け込み、たっぷりのかつおぶし、ネギ、白ゴマとともにご飯にのせた「柔らか煮豚丼」も、箸が止まらない美味しさです。サービスで出される白菜の漬け物は、寺嶋さんの80代のお母さんが作っています。細く切ったイカのスルメと一緒に漬けこまれた白菜は、塩気が濃すぎない優しい旨みがあります。

▼柔らか煮豚丼

地元の人に再び喜んでもらいたいという寺嶋さんの思いが詰まったラーメンは、口コミで人気が広がり、道内遠方や、道外からの旅行者が訪れることもあるそうです。お客さんたちのことを大事にしている寺嶋さんの気持ちが、お話の随所から伝わってきました。小さな子にもきめ細かい心遣いを見せる、寺嶋さんや店員さんの温かさが満ちた小さなお店。檜山地方を訪れた際にはぜひ立ち寄ってみてください。

しおトンコツラーメン 嶋
爾志郡乙部町緑町370-1 [地図]
TEL:0139-62-2629
駐車場:2台程度、無料
営業時間:11時~14時、23時~25時
定休日:水曜、日曜