「道外の人が考える1泊2日北海道旅行プラン」を実際にやってみた結果

北海道の面積は想像以上に大きいものです。北海道の大きさを本州に当てはめた地図の記事にある通り、北海道本土の東西は、大阪から東京を通り越して銚子までの距離に相当します。

この北海道サイズは、実際に出張、旅行、移住してみないとわからないものです。たいして距離がないと思っていても、実際には数時間かかることも少なくありません。例えば、釧路と根室は北海道の端っこの都市ですが、車で2時間もの距離があります。根室で用事があるのに、数十分程度の距離だろうと思いこんで釧路のホテルを取ると大変なことになります。

そのようなわけで、北海道を訪れたことのない人に「1泊2日北海道旅行プラン」を考えてもらうと、真面目に考えたのに ほぼ不可能と思われるプランが誕生します。

そこで今回は、そんな無茶な旅行プランを道外の人が考えてくれたので、実際にそれを実行してみようと思います。なおこれは、北海道旅行プランを立てる時、距離感に気をつけてほしいという注意喚起のために企画、実施したものです。

道外の人が考えた1泊2日北海道旅行プランを検証

今回道外在住者が考えてくれた1泊2日北海道プランは次のとおりになります。

1日目
新千歳空港→帯広→知床→旭川(1泊)
2日目
旭川→札幌→小樽→函館(空港から帰路)

地図に表すと次のとおりになります。

行きたいところがいっぱいあるのはわかります。帯広でスイーツを味わいたいし、世界自然遺産知床は一度行っておきたいし、旭川の旭山動物園でかわいい動物たちに会いたいし、札幌は外せないし、小樽運河も函館夜景も見たいですしね。気持ちはわかります。

でも道民であれば、これを見てすぐに「いやこれは無理でしょ!」「知床を省いてもきついし!」「3~4日はほしいプラン」などと思うことでしょう。「お願いだから考え直して」とアドバイスすると思います。

では、道民はなぜこのプランにストップを掛けるのでしょうか。まずは、このプランを実行した場合の所要時間・距離をご覧ください。この事実を知れば、衝撃を受けるでしょう。

1日目

新千歳空港→帯広(約2時間10分・約161km)
帯広→知床ウトロ(約4時間00分・約243km)
知床ウトロ→旭川(約4時間30分・約282km)
合計移動時間距離:約10時間40分・約865km

参考時間:東京駅から山口県光市まで約10時間45分・約885km

2日目

旭川→札幌(約1時間50分・約138km)
札幌→小樽(約0時間45分・約38km)
小樽→函館(約3時間55分・約245km)
合計移動時間距離:約6時間30分・約421km

参考時間:東京駅から兵庫県神戸市須磨区まで約6時間35分・約544km

2日間合計、17時間10分、1,286kmとなります。本州に当てはめてみれば、東京駅から鹿児島県南九州市までの所要時間に相当するのです。

いずれも有料高速道路を利用した場合の最速時間をベースにしています。本州のそれは高速道路を専ら使えば良いルートです。一方、北海道はそこまで高速道路が発達しておりませんので、一般道も駆使しなければなりません。北海道のほうが大変です。

せっかく考えてくれたプランですから、実際にやって検証してみないとその大変さはわからないと思います。編集部は今回、このプランを実際にやってみました。

今回のルール

今回のルールは次のとおりです。

  • 法定速度を守り1泊2日で回り切ること
  • 挙げてくれた訪問地は必ず通り、必ず車を降りて観光すること(トイレ休憩含まない)

行きたかった地では観光しなくては意味がありません。そこで、観光またはグルメ・スイーツなど、少なくとも1つはその地の魅力を楽しみます。

道外の人が考える1泊2日旅行プランを実際にやってみる

1日目:知床で既に真っ暗に?

出発地は、北海道の空の玄関口、新千歳空港(千歳市)です。時刻は9時半。朝イチの飛行機で到着したという設定で、ここからレンタカーを借りて最初の目的地、十勝の帯広を目指します。

▼新千歳空港がスタート

日勝峠で一休み。十勝平野を一望する日勝峠展望台に立ち寄ります。峠を降りたらちょうど昼頃。清水町のレストラン「ゆめあとむ」で、ご当地グルメ「十勝清水牛玉ステーキ丼」「十勝牛とろ丼」をいただきます。

▼清水町でご当地グルメに舌鼓

帯広を目指しますが、今回はすぐお隣の音更町にある柳月スイートピアガーデンでスイーツタイム。十勝銘菓あんバタサンをいただきます。

柳月スイートピアガーデンといえば三方六の切れ端

▼柳月スイートピアガーデン前で記念撮影

その後、十勝を北上し、足寄町の道の駅あしょろ銀河ホール21でトイレ休憩します。時刻はすでに15時を過ぎています。

十勝の次はオホーツク海に面する斜里町ウトロを目指します。そう、世界自然遺産知床です。しかし、帯広(実際には音更町)から4時間以上もかかるうえに、山間部を走り抜かなければならないため、ドライバーとしてはしんどい時間が続きます。

知床に着いたのはいいですが、真っ暗闇。時計を見れば、18時をとっくに過ぎています。せっかくの世界自然遺産の風景がもったいない! ひっそりとした道の駅ウトロシリエトクでトイレ休憩したあと、いま来た道を引き返すことになります。

▼世界自然遺産は明るいときに来るべき

さて、時刻も時刻ですし、もうタイムアップ。本来ならここで宿泊地を決めるのが普通です。知床ウトロで宿泊すればいいのですが、でも我々の本日の目的地は、旭川市です。そこでなくなく旭川を目指すことになります。所要時間はなんと4時間半。真っ暗な中を旭川に向けて走ることになるのです。

とはいえ夕飯の時間。途中の大きな都市・北見市で、北見式焼肉をいただきます。しかしゆっくりもしていられません。これから峠越えをして旭川を目指すのですから。つかの間の休憩も虚しく、重い腰を上げて出発。時刻は22時を過ぎています。頑張って走りましょう。

▼北見といえば焼き肉

石北峠頂上でちょうど0時をまわりました。山を降りれば夜中1時を過ぎていることは確実でした。旭川市に到着したとしてもこの時刻でホテルのチェックインはできませんし、これ以上の運転は体力的に難しいと判断し、当麻町の道の駅とうま で本日の任務を終えることにしました。夜中1時半、1日目終了です。

▼安定の車中泊



2日目:あの小樽運河にわずか2分の滞在?

2日目は、とりあえずコンビニで朝食を済まし、旭川市の観光地として旭山動物園に向かうことにします。旭山動物園は思いの外楽しんでしまったため(というか、30分程度で出られるわけがありません)、2時間近く滞在することになるのでした。

▼旭山動物園が楽しい

時刻は12時。旭川の次は札幌を目指します。旭川から札幌へ向かう区間は、大きな街も多いのでちょっとした安心感があります。札幌市で訪問する観光地は札幌市時計台に設定。また、14時近くになっているため、札幌らしいグルメとしてスープカレーのRAMAIでランチタイムにしました。なお、札幌中心部を通る場合は、交通量も信号も多いので時間がかかることを覚悟しておきましょう。

▼RAMAIでスープカレー

▼札幌市時計台をさっと見て小樽へ

時刻は16時。札幌の次はお隣の小樽市へ向かいます。小樽といえば小樽運河ですが、ここはさっと観光して次へ進みます。時刻は17時過ぎで夕暮れですから、本来ならここでタイムアップです。ホテルにチェックインする時間です。でも我々の本日の目的地は函館です。

小樽からは国道5号、長万部経由で一路函館へ。羊蹄山近くを通る頃には、外は既に真っ暗です。

▼明るいうちに着くのは諦めた

道の駅なないろ・ななえ(七飯町)で休憩すれば、ゴールの函館はもう間近です。函館の観光地ということで、五稜郭公園の五稜郭タワーをゴール地に設定。21時過ぎに到着しますが、当然もう完全に閉まっていました。

▼五稜郭タワーは当然終わっている時間

設定では、このまま函館空港から空路で帰る予定ですが、当然この時間、飛行機は飛んでおりません。タイムオーバーということです。(※このあと、夜でも営業しているラッキーピエロで夜ご飯をいただきました。当然宿泊もできず、本拠地札幌へ帰るだけの試練が待っていたのは言うまでもありません)

【映像】道外の人が考える1泊2日北海道旅行プランを実際にやってみた

結果「ただ走るだけになった」

以上、道外の人が考える1泊2日北海道旅行プランを実際にやってみました。結果はおわかりのとおり、深夜までかけてまわることはできますが、現地で観光はほとんどできず、ただただ車で走るだけとなりました。

知床は真っ暗、初日は旭川までたどり着けず、小樽はわずか2分の滞在、函館五稜郭タワーは夜すぎてやってない、函館空港から帰れない、という結果に。しかもほぼ座っているため、お尻の肉が取れます。これはおすすめしません。真似してもいいことはありません。

ではどうすればよいのか

現地観光を十分楽しめるプランに変更したいと思いますが、どうしたら良いでしょうか。

道民の感覚としては、札幌―旭川、札幌―帯広は日帰りが可能、札幌―函館は頑張れば日帰りが可能ですが、おすすめはしません。じっくりと観光できません。ですから、旭川―札幌―函館を一日に詰め込むのは得策ではありません。

また札幌基準で考えれば、知床・根室周辺は距離がありすぎるので、日帰りはほぼ不可能と考えたほうが良いです。今回のプランでは、初日に知床経由の旭川行きという無謀なルートが練り込まれました。このままではほぼ観光できず、日をまたぐことになるのが、おわかりいただけたかと思います。

1泊2日であれば、知床までのルートは大幅カットする必要があります。そのうえで、帯広か旭川どちらかを選択した上でプランを練り直せば、1泊2日でも多少の観光を楽しむことができるでしょう。

1日目:新千歳空港→帯広→札幌
2日目:札幌→小樽→函館
※そもそも、とかち帯広空港に降りたほうが便利。

現地で何時間もゆっくり回りたいのでしたら、これでも詰め込みすぎです。帯広を削って、札幌・小樽・函館だけにするのも一つの方法です。

1日目:新千歳空港→札幌→小樽
2日目:小樽→函館

参考にしていただければ幸いです。十分に距離と時間を調査した上で、用法用量をよく守り、北海道旅行プランを立てましょう。