北海道は温泉王国ですね。登別温泉をはじめ、日本有数の温泉が多く、また、温泉の数も豊富です。そんな中から今日は国際的に見ても大変珍しい温泉について取り上げてみたいと思います。
もうタイトルの時点で、温泉通(つう)のあなたならおわかりでしょう。そう、十勝川温泉のモール温泉です。北海道遺産第2回選定でも選出され、大切な北海道の資源であるモール温泉がクローズアップされました。
そもそもモール温泉ってなにさ?
まず、この「モール」ですが、ドイツ語に由来しています。ドイツ語で泥炭を意味する「Moor」の名前の通り、泥炭を通して湧出しているもの。植物性の腐食質が主成分となっており、地下にははるか昔の樹木の堆積物がありますが、その発酵熱や地熱が熱源となっています。ですから、鉱物成分が多い通常の火山由来の温泉とはちょっと違います。
湯は黒味がかった、茶褐色のような独特の色で、植物性でまろやかな湯なので皮膚にもやさしく、しかも天然の保湿成分を多く含有していることもあって、入浴後は肌がすべすべに!と特に女性に評判。植物性なので、肌の浸透性も抜群で、血液の循環を促進させ、すぐにあったまります。これが「十勝川温泉=美人の湯」と言われる由縁です。さらに腰痛や神経痛、皮膚病、胃腸などにもきくといわれています。
十勝川温泉はっけ~ん秘話!
20世紀初め頃から依馬嘉平、前田友三郎といった人たちによって自然湧出の温泉が発見されていましたが、林豊洲が近くのボーリング作業を行い、観光地として発展させようと「十勝川温泉」と命名されたのは1930年代のこと。しかしこの時点で適温な温泉は見つかっていなかったようです。その後の粘り強い努力によって1934年についに45度の温泉を発見。
近くに火山のない地で熱い湯は出ないと散々言われていたにもかかわらず、今や、十勝地方を代表する観光名所・温泉郷になりました。この努力の賜物である貴重な資源を守ろうと、温泉街では泉源の集中管理を1990年代に始めています。
世界に2箇所だけ!?
といわれておりますね。モール温泉は日本では北海道十勝支庁の十勝川流域、世界的に見るとあとはドイツ南西部にあるバーデンバーデン地方にのみとされています。しかし、北海道内でもこの十勝川流域地域(音更町・幕別町・帯広市)のほかにも、石狩平野、日本最北の温泉がある豊富町などにおいて湧出しているとのこと。さらにさらに、九州のほうでも「モール」とうたっている温泉があり、世界に2箇所だけと言い切るのは厳しいようです。それでも、十勝川温泉のモール温泉は日本、いや世界に誇れる温泉であることは間違いありません。