100年続く建物を修復し活用を―市民ボランティアが支える『旧寿原邸』


【小樽市】 市内東雲町の水天宮の北側に建つ『旧寿原邸』(写真)。
大正元年に建てられたこの建物は、小樽を代表する実業家・寿原外吉氏の邸宅であり、「小豆将軍」の異名をもつ雑穀商・高橋直治氏が創建した、「北のウォール街」と呼ばれた頃の小樽を象徴する建物で、敷地内には3つの建物が並び、下段の和室からは小樽港を一望でき、歴史の浅い北海道でも100年も存在しているという珍しい建物で、日本でもなかなかお目にかかれてない数寄屋建築です。

1986年12月には寿原外吉氏の妻が、長年お世話になった小樽市にお礼がしたいということで小樽市に寄贈。この時の寿原邸は、土地と建物合わせて時価約一億四千万円だったそうです。

現在の『旧寿原邸』

現在の旧寿原邸は小樽市の歴史的建造物第27号に指定され、寄付後当初は邸内を文化サークルの活動の場として、また庭園を憩いの場として市民に無料で開放し、年間2,000人が見学に訪れるなどしていました。


1995年に公開された岩井俊二監督、中山美穂さん・豊川悦司さん主演の映画「Love Letter」では、ロケ地として利用されたことでも有名で、「Love Letter」が東南アジア圏でヒットしたことと、戦後、韓国で公開された日本映画ということもあり、海外から旧寿原邸に訪れる観光客も多いといいます。


▼ラブレターの撮影で使用された

また、建物も当時の建築方法のまま残っており、見ただけで歴史を感じさせるものもあります。

▼亀甲ぐみ石段

こちらは建物の土台。亀甲組みという珍しい石垣の組み方がされています。

▼上段簀戸。▼右:上段簀戸に入っていた箱に貼ってあった物

こちらは簀戸という窓。宮内庁ご用達業者が作ったものが利用されています。

しかしながら、2000年代になると市の財政難から維持管理も難しくなり、池や庭園の手入れ、冬の除雪作業もままならず、2013年度は内部調査の為に一般公開されませんでした。
映画に登場した綺麗な寿原邸の姿を求め、今でも足を運んでくる観光客の方々が居るといいますが、この現状に驚き、がっかりしながら帰られるということです。

▼勝手口の石の部分。▼右:雪がひどい和室下段 トイレ

▼壽原邸上段水天宮側屋根。▼右:池が枯れた後のヘドロの深い水たまり

『旧寿原邸』維持管理活動とボランティアの方々


このような形になってしまった旧寿原邸を当時の美しさをそのままに活用していこうと、特定非営利活動法人Visit Otaru Projectの高橋祐さんらがKotobukiを立ち上げ、旧寿原邸の修復や利用活動に全力を注いでいます。
ボランティア自体は昨年2012年から本格的に開始し、主に除雪や草刈り、建物内の備品補修を行っています。

写真は、裏の木戸の修理状況。
当時の建築方法のまま残っているので、手作業で補修を行っています。


▼勝手口の雪かき(ビフォー&アフター)

勝手口の雪かきの実施前と実施後の写真。
屋根の雪下ろしも暫く行われていなかったことで、1階のふすま部分が開かないなどという事もあったとか。

また、ボランティアを頑張っていくうちに、最初は旧寿原邸前に違法駐車をしたり、雪の投げ捨てをしていた一部の住民の行動も、段々と無くなっていったといいます。Kotobukiの熱意のあるボランティア活動が住民に伝わったのでしょう。

『旧寿原邸』に訪れる人々

旧寿原邸に訪れる市民、観光客は現在でもいますが、中には寿原外吉氏が多大なる影響を与えたという旭ガラス小樽支社(当時)の関係者が今でも毎年30~40人は訪れます。

当時、使用人だった方や娘さんなど、関係者のご子息が多く、中には、寿原氏の銅像を妻に見せ「この方には本当にお世話になった」と、銅像を撫でながら涙を流し、当時の話をする関係者も居るといいます。

▼寿原外吉像。▼右:寿原外吉像(旭ガラス寄贈)喜寿のお祝いに

また、旧寿原邸は、昨年2012年8月には100周年を迎え、ボランティアの方が中心となり、旧寿原邸にて100周年記念イベントが行われました。
予算5,000円という状況の中、多くの方が訪れ、盛況のうちに終了。中には小樽市民の方はもちろん、後志地区、札幌近郊の方も訪れたといいます。

イベント時には、「Love Letter」でも使用された応接室で参加者が集まり、合唱を行うなど感動的なところもあったとか。
また、イベントによって、人と人とのつながりが増え、町内会の住民が除雪を手伝ってくれたり、床を磨くのに使用する米ぬかを提供してくれたりと善意は広がりつつあります。

『旧寿原邸』のこれから

旧寿原邸は、皇室の人が宿泊しても良いような造作がされた洗練された建物で、見る人が見れば分かる価値があり、人を優しくする魅了もあり、小樽市内で一番小樽らしい建物だということで、将来的にはKotobuki PJ側で建物を買い取り、歴史的建造物という形式から外れ、無料で公開していきたいということ、落語や寄席にも利用し、自社商品も販売する形が取れればと高橋さんは意気込みを語っていました。また、市民で建物を守っていく形にし、それがビジネスにつながっていけばと次のビジョンを描いていました。

また、日本的に有名な画家や音楽関係者も旧寿原邸に足を運んでおり、「ここで何かやりたいね」という話も飛び出している事から、近い将来、何らかのイベントも行われる可能性もあるかもしれません。

Kotobukiでは知床羅臼商品を扱う自社サイトにて、2013年11月より旧寿原邸協賛商品を販売しており、羅臼昆布1等検「國平」と、山形知事の公認が無いと作れないという山形産のお米「つや姫」のセットを販売し、売り上げ20%を旧寿原邸の維持管理活動の寄付としています。

この商品を組み合わせると、究極のおにぎりが作れるということですので、美味しいものを食べながら社会貢献もできて一石二鳥です(詳しくはKotobukiサイトのページをご覧ください)。
Kotobukiが動き出した影響から、旧寿原邸の協賛品を作ろうという声が市内の他の企業でも上がっており、地元企業の維持管理の動きは広がりつつあります。

旧寿原邸の維持管理について興味を持たれた方は、Kotobuki関連サイトを覗いてみてください。旧寿原邸協賛商品を購入したり、ボランティアに参加することによって、きっと旧寿原邸を守る手助けになるに違いありません。
(写真提供:Kotobuki PJ)

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▼旧寿原邸