会費制で領収証付き?!業界人に聞く北海道のウエディング事情

本州の方が北海道に移住して驚くことの一つに、結婚式後に行われる祝宴、いわゆる披露宴を会費制で行う「会費制披露宴」があります。招待制披露宴が当たり前の人からすると、北海道のウエディングは不思議なことが多いのだそう。そもそも会費制披露宴って何なのでしょうか。どのように行われるのでしょうか。他に本州と違うことって何があるのでしょうか。北海道のウエディング事情に詳しい佐藤美華さんに、イマドキの北海道ウエディングについて伺いました。

招待制・会費制の違いをざっくりいうと……

日本のほとんどの地域で行われている披露宴を正しくは「招待制披露宴」と呼びます。一方の北海道と東北の一部で行われることが多い結婚式を本来は「会費制祝賀会」と呼びます。多くの地域で行われる招待制披露宴は、両家が主催し日頃お世話になっている方々を招待して新郎新婦をお披露目する意味合いが強いことからこう呼ばれます。一方北海道は、「二人が結婚するならみんなでふたりのためにお祝いしようよ」と、友人などの親しい人たちが発起人となってお祝いの会を主催したことから、「会費制祝賀会」を行う文化が根付きました。このような点で土台が大きく異なります。

この根本的な考え方の違いは、あらゆるところに違いを生みます。では、どんなところに違いが出てくるのか、見ていきましょう。

北海道ウエディングは、発起人主催の祝賀会から両家主催の披露宴へ

北海道で根付いた会費制祝賀会は本来、発起人がいないと成り立ちません。この発起人がいることが北海道ウエディングの大きな特徴でした。

発起人はどう選ばれるのでしょうか。それは新郎新婦の結婚が決まると、新郎新婦がそれぞれ2~3名ずつ、合計4~6名に発起人を依頼します。友人のほか、職場の上司や同僚に依頼することもあります。依頼された発起人は顔合わせをして、祝賀会開催の準備全体を取り仕切ります。案内状の送付のほか、当日の受付や司会、余興関係、昔は花嫁のドレス選びなども担当することもありました。

しかし最近では、発起人を立てない新郎新婦が大半を占めるようになってきています。その理由として、(1)新郎新婦が発起人の役割や必要性を知らない、(2)面倒をかけてしまう、(3)こだわりが強く自分たちで準備をしたいという新郎新婦が多い、などの理由があります。そのため、最近では北海道の会費制文化はそのままで新郎新婦が自ら主催する、いわば「会費制披露宴」が主流になっています。

北海道では、招待状ではなく案内状を送り、領収証を発行する

▼受付で自分の財布から決められた会費を支払う

招待制では両家の親の名で披露宴の招待状を送るのが一般的なのに対し、北海道は会費制なので、本来は発起人が祝賀会の案内状を送ります。発起人がいない場合は新郎新婦の名で案内状を送るのが一般的です。案内状の内容は招待状とあまり変わりませんが、日時と場所のほかに会費の金額が記されています。金額は16,000円前後が現在の主流です。

会費は当日受付で財布から直接支払います。それと引き換えに領収証を受け取ります。領収証は本来発起人の名で出しますが、発起人を立てない場合は新郎の名で領収証を発行します。なお、これは結婚式のしおりと同じになっている場合がほとんどです。

▼領収証の例

北海道では、席順も進め方も違う

招待制の場合、新郎新婦に最も近い席から主賓(上司や目上の方)が座り、その後ろに同僚、友人、新郎新婦から最も遠い最後列の両端に主催者である両家の親族が座ります。会費制の場合は、主賓と同僚、友人までは一緒ですが、新郎新婦の親族が最前列両端、最後列両端に主催者の発起人が席を取ります。しかし、発起人がいない場合でもこのスタイルが踏襲されているため、主催者であるはずの親族が他のゲストよりも前方の席に着くことになります。これはそもそも主催者が違うためで、招待制に慣れている本州の方は最も驚くところだといいます。

披露宴の進行も違いがあります。招待制は依頼した司会者が進行します。新郎新婦入場シーンを設ける場合がありますが、新郎新婦や両家がゲストを出迎える迎賓を最初に行い、そのままゲストと共に着席することもあります。ゲストへの謝辞をもってお開きとなり、新郎新婦は静かに会場を出て出席者を見送るのが定番スタイルです。

一方の会費制は、基本は司会者が進行しますが、発起人がいる場合は発起人が進行することもあり、最初に発起人の代表者が挨拶をします。その後、発起人をはじめゲストが新郎新婦を迎える形で派手に入場することも多いのが特徴です。結びに乾杯などの発声があり、その後二人の門出を祝福するゲストの拍手に送り出され、新郎新婦が退場しお開きとなります。

北海道は、出席人数が多い、二次会は減る

披露宴に出席する人数も違います。首都圏の招待制では親族の他、ごく親しい人のみを招待するため70人前後が相場で、友人たちをたくさん呼ぶ二次会では人数が増えて100人を超えることもしばしば。二次会から来る人も多いのが招待制の特徴です。

一方の会費制では、80~100人前後が出席するのが現在の平均です。これはもともと、新郎新婦を地域のみんなで盛大にお祝いしようという考えに基づくもので、かつては地域の町内会や青年団、集落の人たちなども出席し300人を超えるような祝賀会も多くありましたが、近年はおもてなし志向の強まりから身近な人だけに出席してもらうのが主流になりました。このような歴史があるため、減少傾向ではあるものの現在でも招待制に比べ会費制は出席者が多いのです。

二次会はカラオケや簡単なゲームなどを行う程度のものが多く、祝賀会や披露宴から二次会にそのまま出席者が流れていきます。しかしながら親族や主賓など二次会には参加しない人もいるため、人数は若干減る傾向があります。発起人が二次会の手配や準備、進行等も行いますが、発起人を立てない場合、二次会の手配や準備は新郎新婦が行うか、友人にお願いします。

北海道ウエディングは、リーズナブル

かかる費用も格段に違います。まず出席者。招待制はご祝儀の金額は出席者が決めますが、友人ですと3万円程度を包むのが多いでしょう。会費制ですと16,000円程度とあらかじめ金額が決まっていますので、いくら包もうか悩む必要がありません。会費制は招待制の半分で済みゲストの負担が少ないのも大きな違いでしょう。

主催者側としても開催費用が違います。招待制は300~500万円程度。披露宴の料理にお金をかけ、各人20,000円ほどの料理や飲み物を提供するのが相場です。会費制は16,000円×人数、プラス両家負担30~200万円が平均ですので、合計300万円行くかといったところです。会費はだいたい料理と飲み物代に相当します。

引出物も違います。招待制は、2~3品目用意するのが一般的で、両家が出す引出物に加え、引菓子を新郎新婦の名で出します。引出物と引菓子の総額は5,000~8,000円が相場です。一方の会費制は、引き出物は会費の1割程度(1,500円程度)でバウムクーヘンなどが多く見られます。

新郎新婦どちらかが本州出身の場合や、近親者のみ招待する場合、招待制にすることがあるようですが、道内では全体の5%程度を占める程度で、90%以上が会費制を採用しています。ゲストの負担の少なさや、招待制に比べてかしこまりすぎずアットホームなところなど、本州でも、北海道の会費制の良いところを取り入れたパーティーを行う例も増えつつあるようです。

まとめると、北海道の会費制と本州の招待制はこんな違いがありました。

<主催者>
招待制披露宴:両家
会費制祝賀会:発起人(最近は新郎新婦)
<発起人の有無>
招待制披露宴:無し
会費制祝賀会:有り
<告知>
招待制披露宴:招待状
会費制祝賀会:案内状
<ゲスト負担>
招待制披露宴:ご祝儀(友人約30,000円)
会費制祝賀会:会費(約16,000円固定)
<領収証の有無>
招待制披露宴:無し
会費制祝賀会:有り
<出席者数>
招待制披露宴:70人程度
会費制祝賀会:80~100人程度
<二次会出席者数>
招待制披露宴:100人超のこともある(増える)
会費制祝賀会:数十人程度(減る)
<席順>
招待制披露宴:両家親族が最後列両端
会費制祝賀会:両家親族は最前列両端、発起人が最後列両端
<式の進行>
招待制披露宴:司会者が進行、迎賓(ゲスト入場)、結びと新郎新婦退場がない
会費制祝賀会:司会または発起人が進行、新郎新婦が派手に入場、結びの乾杯・新郎新婦
退場
<引き出物>
招待制披露宴:引出物(主催者)+引菓子(新郎新婦)5,000~8,000円
会費制祝賀会:引出物(主催者)1,500円前後(会費の一割程度)
<開催費用>
招待制披露宴:両家負担300~500万円
会費制祝賀会:両家負担30~200万円+会費=300万円弱

本州で一般的な招待制披露宴、そして北海道の会費制祝賀会。どちらにも一長一短あるようです。時代を経て、そのスタイルは変容しつつありますが、会費制の根本的な考え方はいまも北海道に根強く残っています。

<取材協力・監修>
佐藤美華
The Graces 代表。2007年に北星学園大学社会福祉学部福祉心理学科を卒業。大学卒業後、札幌市内のホテルにてブライダルプランナーとして勤務し、その後フリーに転身。ブライダルプランナーのほか、専門学校や企業等でのブライダル・接客・ビジネスマナーの講師、司会業、モデル業と、幅広い活動を行っている。

<参考文献>
ブライダル総研 ゼクシィ結婚トレンド調査2015

<写真提供>
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