前回、大好評のうちに終えた「ひみつキッチン」のオンラインイベント。北海道の各地域で魅力的な関わり方や働き方を実践している人をゲストに迎え、質疑応答を含めた楽しいトークが繰り広げられます。
今回の司会を担当するのは、写真家であり北海道カメラ女子の会代表でもある渡邉真弓さん。ゲストスピーカーに地元釧路でさまざまな活動を行っている名塚ちひろさんを招き、「人と人とをつないで、道東をデザインする」をテーマに、いよいよイベントがはじまりました。
まずは名塚さんがどういう活動をしているのか、ご自身から簡単に紹介してもらいます。
釧路市で生まれ育った名塚さんは、現在「釧路の案内人」として、「クスろ」という団体を設立してクスッと笑えるご当地キーホルダーやTシャツなどのグッズを作成したり、ゲストハウス「コケコッコー」を運営したり、一般社団法人「ドット道東」の理事を務めたりと、ザッと概要を聞くだけでもその活躍ぶりがうかがえます。
ここでZoom参加者へ司会の渡邉さんから質問が。
「皆さんの中で、釧路もしくは道東に行ったことがある人はどれくらいいるんでしょう?」
アンケートの結果は「ある」が91パーセント、「ない」が9パーセント。この結果は名塚さんも予想以上だったようで、思わず笑みがこぼれます。
そして改めて、名塚さんのここまでの歩みが語られていきます。10代の頃は地元から離れたくて「たぶん二度と釧路で住むことはないだろうな」と、函館の大学に進学したこと。卒業後は上京して「富士通デザイン株式会社」にてデザイナーとして働きだしたこと。充実した毎日の中、ふと「私にはもっと他に向いているものがあるのでは?」と悩みはじめたこと……。
ある日、帰省中に高校時代の友人から「釧路って意外と面白いよ」と言われ、地方都市への興味がふつふつと湧き出したそう。もともと東京でデザイナーとして働くかたわら「クスろ」を立ち上げていたこともあり、釧路へUターンすることを決意。「釧路にいるメンバーが面白いし、帰るなら今だ!」という直感が働いたようです。
そこからは行動が早かった名塚さん。これから釧路を訪れる人に、自らの培った人脈を還元できないかと、ゲストハウスの運営を思いつきます。阿寒町にて理想の物件を見つけ、ノウハウもないままに改装し、ついにゲストハウス「コケコッコー」を完成させたのです。ちなみにペンキ塗りなどはワークショップを開いて地元の人々と行ったそうで、オープニングパーティーには近所からたくさんの人がお祝いに駆けつけたのだとか。
いい意味で人々を巻き込むのが上手な名塚さん、ヘルパー制度(食と住を提供する代わりに運営の手伝いをしてもらう制度)でゲストハウスに集まってきた人財を、どんどん近所の農業の手伝いなどにも回すことで、地元の活性化にも繋げていきました。オープンから4年が経つ現在、周りに飲食店やコインランドリーも数軒できたというから驚きです。
パワフルな名塚さんの活動は、これで終わりではありません。今度は釧路のみならず道東全体を巻き込んで一般社団法人「ドット道東」を立ち上げます。
「道東には面白いことが点在しているんです。それを何とか繋いでいきたいという思いがありました」
そう語る名塚さんの目はキラキラして、司会の渡邉さんもニコニコと相づちを打ちます。ドット道東では、道東のアンオフィシャルガイドブック「.doto」を創刊し、さらに現在は第二弾となるビジョンブックの出版に向け、クラウドファンディングの真っ最中。着々と思いを形にしていっています。
興味深い話が続き、時間はあっという間に過ぎていきます。開始から50分が過ぎた頃、ようやく質問コーナーへ。質問は、参加者がチャットで好きなタイミングに送信したものからランダムに選ばれます。
「移住しなくても、地元と関わりを持つことはできますか?」
「道東だけじゃなく、他のエリアとの展開も可能だと考えますか?」
「新しい企画をスタートさせる時、資金面で悩んだことは?」
など、なかなか突っ込んだ質問が続き、名塚さんも丁寧に真摯に答えていきます。
内容の濃い質疑応答が終わったところで、今回のトークのポイントを「今日のレシピ」として名塚さん自身にまとめてもらいました。そのレシピがこちら。
「『いつか』はいつまで経っても来ない。自分がそのスタートを決めるだけ」
この言葉に、司会の渡邉さんも深く頷き、チャットでも「共感できます!」の声が相次ぎました。
今回の名塚さんのトークや過去のイベントのアーカイブ配信はこちら