現役日本最古の観覧車が函館公園にある!

観覧車といえば、ガラス張りのゴンドラに4人くらいが乗ることができて、10分~20分かけてゆっくり回るというもの。北海道内では、岩見沢市の北海道グリーンランドの大観覧車が北海道最大級で、高さ85メートルあります。そのほかに、道内には大小様々な観覧車があります。

一方、道内で最も小さいのが、函館市にある観覧車です。しかも、この観覧車、道内どころか全国で最も古い現役の観覧車なのです。貴重な建造物であることから、文化庁は2019年7月19日に登録有形文化財(建造物)に登録することを発表しました。

現役日本最古の観覧車とはいったい? 函館市「こどものくに」を訪れ、実際に乗ってきました。

これが現役日本最古の観覧車の姿だ!

函館山の麓にある函館公園。その一角に、子どもたちが集う「こどものくに」があります。新幹線のアトラクションが事務所の近くにあり、「しんかんせんひろば」の踏切を渡ると、観覧車の乗り場に着きます。

▼こどものくに

▼しんかんせんひろばにある

▼これが噂の観覧車だ

「え、こんなにかわいい観覧車なの?」と驚くこと必至。それもそのはず、この観覧車は高さ10メートル、直径8メートルしかないのです。長い間、全高12メートル、直径10メートルとされてきましたが、2019年1~4月に分解整備に当たり実測したところ、数値が間違っていたことが判明しました。

▼逆側から見る

▼八角形の鉄製ホイールの中心

八角形の鉄製ホイールについているゴンドラの数は8つ。黄色2つ、青色1つ、緑色2つ、赤色1つ、ピンク色2つで、側面にパンダやサルなどの動物たちが描かれています。しかも、日本ではここだけという2人乗りの長椅子ベンチタイプです。

▼ゴンドラもかわいい

また、一般的な観覧車のボックスタイプ・カプセルタイプと異なり、ゴンドラのまわりが完全に覆われていません。前方の柵を閉めて、リフトのようにバーを降ろすだけなのです。「ある意味絶叫系」と公式サイトで紹介されているのも、最もです。

観覧車の近くや事務所横には、日本最古の観覧車であることを解説するパネル等が設置されています。北海道ファンマガジンでは5年前に記事として紹介していますが、その時点で既に「日本最古のかんらんしゃ」の表記がありました。

現役日本最古の観覧車に実際に乗ってみよう!

では、現役日本最古の観覧車に実際に乗ってみましょう。入園料は無料です。ただアトラクションに乗るには、事務所(チケット売り場)で乗り物チケットを購入します。1人1回300円。「こどものくに」で、ほとんどがこどもたちの利用ですが、親子で乗ることもできますし、もちろん大人が乗ることだって可能です。

誰も乗っていない時は回転を止めています。乗り場に向かうとスタッフへチケットを渡し、ゴンドラに乗ることができるのですが、乗る時は回転が止まります。ここは一般的な観覧車と違うところかもしれません。乗降時に必ず一時停止するのです。乗る人が多ければ乗車時間も増えるという仕組みです。

ゴンドラに乗ると、前の柵をスタッフが閉じてくれます。続いて、バーを降ろすよう指示されます。その後、ゴンドラが前に向かって動き出します。覆いがないから開放感を感じ、子どもたちの騒ぎ声や自然の音を聞き、また爽やかな風を感じられるのが魅力です。

▼こどものくにを眼下に

その後、ゆっくりと高度を上げていき、「こどものくに」の全景を見下ろす高さまでに。1分半もすると、ついにてっぺんに到達します。てっぺんからは、右手に津軽海峡の水平線を木々の間から覗き見ることができます。これは観覧車に乗った人だけの特権です。

▼てっぺんからの風景

約3分の観覧車の旅も終わり。一番下に着くと、再び回転が止まり、スタッフの誘導で降りることになります。大人の場合、降りた後に前のゴンドラに頭をぶつけないように注意してください。

大沼公園から移設した空中観覧車

この観覧車は、いつ作られたのでしょうか。当時「空中観覧車」と呼ばれていたこの観覧車は、1950年(昭和25年)に、駒ケ岳を望む七飯村(現在の七飯町)大沼湖畔東大島に建設、設置されました。製造業者は不明ですが、アメリカ製の移動式観覧車に同タイプのものがあるようなので、もしかするとアメリカ製かもしれません。

一方、函館公園は1879年(明治12年)11月3日に開園。1954年(昭和29年)7月には、函館公園と五稜郭公園で北洋漁業再開記念「北洋博覧会」を開催しますが、このときに使用されたメリーゴーランドや飛行機などの遊具を活用して1956年(昭和31年)5月、「こどものくに」を現在地で開園しました。

空中観覧車が大沼湖畔から現在地に移設されたのは、それから9年後、観覧車建設から15年後の1965年(昭和40年)のことでした。2006年には函館公園全体が遊戯機械を含み国指定文化財、登録記念物(名勝地)に指定されています。

現役日本最古の観覧車であることが判明したのは、2006年。観覧車研究家の福井優子さんが、関係者や函館新聞のマイクロフィルムなどをもとに調査し、観覧車建設と移設の経緯や、日本最古であることを突き止めました。

なお、「こどものくに」は16種類のアトラクションがありますし、ミニ動物園や博物館も併設されています。レトロな遊園地にある、現役日本最古のかわいい観覧車。大人も子どもも乗りに行ってみてくださいね。

函館公園こどものくに
所在地:函館市青柳町17-4
営業時間:3月下旬~11月中旬の11時~16時(春休み・夏休み、祝祭日は10時~17時)雨の日は休園
料金:1人1回300円

出演:佐藤理華

※2020年9月2日、70歳を迎えました。