頂上で飛び跳ねるとドンドンと音が鳴る!厚沢部町「太鼓山」の謎

皆さんもきっと、地面で足踏みしたり飛び跳ねたことはあるかと思います。地面から帰ってくる音は、トントンという乾いた音だけでしょう。でも、ドンドンと鈍い音が鳴り、あたり一面が揺れるとしたら? ちょっと怖いですよね。そんな山が厚沢部町にはあります。どんな音が鳴るのでしょうか? なぜ鳴るのでしょうか?

その名も「太鼓山」! 山頂でドンドンと足踏みしてみた

厚沢部町市街に寄り添う標高171mほどの低い山は、「太鼓山」として地元では古くから親しまれています。登山口からは木々の中につけられた急な坂を登り、山の尾根につけられた道をアップダウンを繰り返しながら進んで頂上にたどり着きます。山頂までに要する時間はおよそ30分です。






山頂には、太鼓山山頂を示す看板と、広場にベンチがいくつか設置されています。また、厚沢部の田園風景を見渡すこともできるようになっています。

▼太鼓山山頂





太鼓山山頂で強めに足踏みしたり飛び跳ねたりすると、音が明らかに違って聞こえます。ドンドンと太鼓をたたくかのような音が返ってきます。その下に空洞があるかのような鈍いドンドンという音が鳴り、振動があって周囲の地面も揺れているように感じます。三脚を置いて飛び跳ねた動画を撮ってみると、カメラ自体の揺れも確認されます。

▼動画で見る太鼓山山頂のドンドン

厚沢部町農林商工課によると、実際にその下がどうなっているのか、なぜ音が鳴るかは不明だそう。強く飛び跳ねると地面が抜けて空洞に落ちてしまうのではないか……、そんな不安を感じてしまいそうですが、それは問題ないそうです。地元の古老によれば、昔に比べてドンドン鳴る音が小さくなっている、ということがわかっています。

かつては山道の入口だった!歴史感じる太鼓山

この太鼓山の歴史は古く、館や鶉山道越えの道筋で、今でもその跡が残されています。明治元年の1868年11月には、松前藩主・徳広が館城入城のとき、籠に乗ってこの道を行列し、村民一同が土下座して歓迎したという古老の言い伝えがあります。現在の遊歩道は、旧道路をもとに1985年に整備したものです。

▼見出しの笠松

麓には「見出しの笠松」(1973年3月17日北海道記念保護樹林指定)という樹齢170年以上とされる赤松の老木があります。開拓者が入植した当時は密林で見通しが悪く、山道の入口にあたる場所にあったことから道中の目安として親しまれ、傘に似ていることからその名で呼ばれるようになったそうです。

歴史を紐解くと、山の名については当初「おかりや」と呼ばれていました。その由来としては、松前藩の殿様が通る際にこの山に仮屋を建てて休んだことにちなむ説、またはそれ以前から狩猟や鶉狩りをしていたことにちなむ説とがあります。厚沢部町の昭和期の町広報誌(1973年)には、かつて子供の時に「おかりや」と呼んでいた町史編集委員の証言があります。

しかし大正時代に入り、蛾虫小学校(現在の厚沢部小学校)の先生、安藤市兵衛氏が子供たちと山に登った際、皆が足踏みして地鳴りするのを聞いており、「これは太鼓山だ!」と大声で叫んで喜んだと記録されています。それ以来、町民の間では太鼓山と呼ばれ親しまれるようになったと考えられています。

▼山頂近くの木霊塔

1948年7月には、森林資源等に材木の恩恵に感謝の意を込めて忠魂碑高台に木霊塔が建立されました(腐朽したため1974年に再建)。1984年には太鼓山スキー場に簡易リフトが完成し、町民のスポーツの場に。また、太鼓山山頂までロープウェイをかけたり、登山する途上に実際の太鼓や打楽器を置いて鳴らしながら登ってもらうなど、太鼓山の音を観光資源にできないかとの構想が語られたこともありました(『厚沢部川を語る』1991年)。

このように歴史のある厚沢部町の太鼓山は、夏季に気軽に登ることができます。歴史を感じながらぜひ山頂まで登り、足踏みしたり飛び跳ねたりして音を鳴らしてみてください。