動きも表情も豊かな人形に見入ってしまう!函館「からくり人形館」

【函館市】元祖ロボットの「からくり人形」。そのからくり人形を約40年間作り続け、自宅で展示している男性が函館市にいます。からくり人形の作り手としては北海道でただ1人の存在であるという平塚英昭さんの『からくり人形館』を訪ねてきました。

からくり人形を作り続けて40年

函館市中道の住宅街にある平塚英昭さん(71)のご自宅。家の玄関とは別に入り口が設けられた『からくり人形館』があります。上品なたたずまいの入り口に近づくと、窓の中から外を見つめる人形たちの姿。「ちょっと怖いな。夢に出てきたらどうしよう!?」などと少しばかり考えながら、やはり好奇心の方が勝り中に入ると、穏やかな物腰の平塚さんが笑顔で出迎えてくれました。

▼窓からこちらを見る人形は、少し怖い。▼約40年間からくり人形を作り続けてきた平塚英昭さん

▼写真:入り口には、糸を使ったからくり人形の基本形

部屋にズラリと並ぶからくり人形は、30体ほど。からくり人形のコレクターではなく、全て平塚さんが作ったものです。釧路から始まった大手広告代理店でのアートディレクターとしての仕事を勤め上げ、現在は引退している平塚さん。本業とは別に、30歳を少し過ぎた40年ほど前からからくり人形の製作をしてきたそうです。

からくり人形を作り始めた動機は「他の人にはできないことをやりたかったから」。祭りの山車に乗るからくり人形は、特に愛知、岐阜、三重などで多く見られるといい、「からくり人形の追っかけとなって」祭りを見に行く機会を重ねる中で研究したそうです。

1セットに半年は費やす作業

ほとんどは図面なしで製作し、1セットを作るのに費やす期間は最低半年。ようやく完成しても、想定通りに動かないことも。湿度の変化などにより糸の伸び具合も変わり、動きにも影響するという人形たち。表情も豊かで、正に生きているように見えてきます。

▼一体一体の表情も様々。▼天候によっても糸の伸び具合が変化するからくり人形たち

小さなおもちゃのようなからくり人形から、表情がダイナミックに変わったり、酒を呑んだり太鼓を叩く仕草をするからくり人形など、限られた数の人形たちの豊かな動きに、最初少し抱いた怖さも忘れて見入ってしまいました。不思議なのは、怖いと思った人形の表情が、平塚さんの説明を受けながら動く様子を見ているうちに、愛嬌たっぷりに見えてくること。平塚さんの穏やかでさり気ない心配りのあるお人柄が、人形にも反映されているかのようです。

▼表情を変え酒を呑む仕草をする「酒呑童子」

中でもサイズが大きくひときわ目を引くのが、水車の動力を利用して太鼓を叩く人形と餅をつくうさぎ、そして、3分おきに動き出しておじいさんになったり若者に戻ったりと表情を変える浦島太郎。登別温泉にある『閻魔大王からくり山車』は、この浦島太郎の仕組みをもとに平塚さんがプロデュース。1993(平成5)年に、第30回を迎えた登別地獄まつりの記念事業として作ったそうです。

▼水車の力で太鼓を叩く人形と餅をつくうさぎ。▼浦島太郎が箱を開けるとおじいさんに

女性客に人気のからくり人形館

からくり人形については、「秀吉の時代よりもっと前からあったようだが、表に出てきたのは江戸時代中期ぐらいから。貴族階級の人たちが酒を呑みながら、来客などに見せて楽しむ贅沢品だった」そうです。

特にPR活動をしていないものの、観光客などが日々ふらりと訪れるそうで、9割は中高年の女性客。中には、窓から見える人形を見て、グループで訪れはしたものの怖がって外で待つ人もいるそうです。布による人形を作っている人の訪問もあるといい、「一般的な人形とからくり人形は根本的に異なるが、人形の作り手という面で話が盛り上がる」といいます。

「夜中に来たら、この人形たち何をしているんでしょうね」と尋ねたら、ニッコリと微笑んで「もう、どんちゃん騒ぎだよ」。会社勤め生活の中で一時期北海道を離れても、「人形たちを残していった函館に戻ってきた」という平塚さん。ご自身の生み出した人形たちを前に、「ここにやってきてくれた人形たちだから大切にしたい」と話します。

五稜郭公園から1kmほど。人形にとりわけ興味があるというわけでなくて、ちょっと気になるから覗いてみたいなというだけでも不思議な余韻が残る『からくり人形館』。観光客の方も、地元の方も、ふらりと訪れてみてはいかがでしょうか。

▼隣りの部屋に並んで座る人形たち

街角美術「からくり人形館」
所在地:北海道函館市中道1-31-18 [地図]
TEL:0138-54-1817
開館時間:10:00ごろ~16:00ごろ
入館料:無料
不定休