日本最後の秘境?釧路のシュンクシタカラ湖

【釧路市】 30度を超える猛暑が全国各地のニュースで連日のように報じられているなか、ここ釧路は例年どおりの涼しい毎日だ。最も暑い8月でさえ、ここ30年間の平均最高気温が21.2度なのだから、本州では必需品のエアコンも不要の爽やかさ。「釧路じゃエアコンなんて売れないんでない?」と、家電量販店から届くボーナスセールのチラシを見ながら、思わず余計な心配をしてしまうほどだ。そんな道東に吹く爽やかな風を写真と映像で感じてもらい、全国の皆さんに少しだけでも涼んでいただきたい、という夏限定の企画を考えてみた。今回は釧路市阿寒町の秘境、シュンクシタカラ湖を紹介しよう。

涼 し さ ★★★★☆ 標高445m、新緑の原生林を渡る風は爽やか
知 名 度 ★★☆☆☆ 道東屈指の秘境だが、意外とマニアには知名度アリ
難 易 度 ★★★☆☆ 途中の林道は荒れ気味で、ヒグマの危険も

GoogleMapによると、こんな山奥

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シュンクシタカラ湖は、釧路市阿寒町にある布伏内地区から、渓谷沿いの林道を延々走った山中にある、これぞ秘境と呼ぶにふさわしい小さな湖だ。実はこのシュンクシタカラ湖、あまりの奥地にあるため「1970年代に人工衛星によって初めて存在が確認され、日本国内で最後に発見された湖」という逸話があり、地元でも信じている人が少なからずいる。しかし実際には、大正時代から林業関係者の間で既にその存在が知られていたといい、1920年(大正9)に、日本陸軍参謀本部の外局である陸地測量部によって測量が行われた5万分の1地形図にも、この湖がしっかりと記載されているのが見て取れる。

http://mapps.gsi.go.jp/contentsImageDisplay.do?specificationId=1355467&isDetail=false


まぁ、出だしからロマンを壊すような話で申し訳ないのだが、林道以外は全く手付かずの原始的な佇まいに包まれていると、そんな都市伝説ならぬ「秘境伝説」にも思わず納得してしまいそうだ。標高は摩周湖や阿寒湖よりも高い445m。周囲1.8km、最大水深は29.3mと小さな割にかなり深め。湖に流れこむ小川は1本、そして流れ出す川は見当たらない。実は流れ出すべき場所で湖水が地中に吸い込まれ、伏流水として付近の沼ノ沢へ湧き出しているという。秘境度タップリの雰囲気とともに、やはりちょっとミステリアスな湖かも知れない。


 辺りの山々は一面の新緑、湖面に吹き抜ける風がとても爽やかだ。岸際には山菜のコゴミ(クサソテツ)やイタヤカエデの葉が揺れ、原生林に響く野鳥の声やヒグラシの蝉しぐれをさえぎるように、クマゲラと思われるキツツキのドラミングが山あいにこだまする。さざなみの湖面にはアメンボが忙しそうに滑り、そこにヤチウグイの群れが小さな波紋を重ねてゆく。周囲はヒグマの気配が濃いから、さすがにリラックスというまでは行かないが、誰もいない新緑の湖を貸し切りで眺めるという、道東ならではの贅沢さを感じるひとときだ。


シュンクシタカラ湖
釧路市阿寒町布伏内
シュンクシタカラとはアイヌ語で、シュンク=エゾマツの、シタカラ<シタッ・カル>=ウダイカバの樹皮を・採る(川)が語源だが、阿寒町の旧名でもあるシタカラには諸説あるという。湖へはクルマで、釧路からまりも国道240号線 阿寒町市街を経て道道222号線で布伏内方面へ。布伏内地区で左折するシュンクシタカラ林道を延々21kmほど進むと到着。途中のシュンクシタカラ川の渓谷は「ミニ層雲峡」とも呼ばれ、秋の紅葉は特に素晴らしいが、林道は落石や路面の凹凸など多少荒れており、車高の高い4WDで行ったほうが無難だ。阿寒町市街から先はガソリンスタンドが皆無なので、ガス欠にも注意。またこのエリアはヒグマの生息地であり、携帯も圏外のため、安易な単独行動は控えたい。