北海道と本州の間の津軽海峡でフェリーに乗船すると、野生のイルカを見ることができるのをご存知でしょうか。海面に姿を見せ、ジャンプする姿は、フェリーの外部デッキから肉眼でも見ることができます。
いつ、どこで、どんなイルカが見られるのでしょうか。津軽海峡のイルカの生態について、津軽海峡フェリー株式会社・北海道大学鯨類研究会・青森県営浅虫水族館で構成する「津軽海峡イルカチーム」に話を伺いました。(トップ画像の撮影および提供:北海道大学鯨類研究会)
津軽海峡で見られる鯨類のほとんどが、カマイルカ
「津軽海峡イルカチーム」は、津軽海峡フェリー株式会社が年間を通して青森県営浅虫水族館と北海道大学鯨類研究会(函館キャンパス水産学部の学生研究団体)の津軽海峡鯨類目視調査に協力していることを背景に、2021年2月25日(木)に結成されました。
北海道大学鯨類研究会は2003年から、浅虫水族館は2018年から津軽海峡フェリー函館―青森航路に定期的に乗船して調査を行ってきました。北海道大学鯨類研究会は船からの目視調査によって、鯨類の種類・頭数・発見位置などを記録し、津軽海峡に生息するカマイルカの生態や来遊個体数を推定しています。
北海道大学鯨類研究会顧問の松石隆教授によると、長年の調査で分かってきたことは、津軽海峡で見られる鯨類全体の85%~90%がカマイルカだということ。群れをつくって行動し、群れごと回遊しているのだそうです。時に100頭以上の群れに出会うこともあるといいます。
また例年、カマイルカが多く見られる時期も決まっていて、4月中旬から6月までが遭遇しやすいとされています。6月後半になると急にいなくなり、7月にはほとんど見られなくなるといいます。
津軽海峡フェリーの航路で特に遭遇率が高いのは、青森県陸奥湾入口付近で、函館から約2時間40分ほどの位置。しかし場所による違いは大きくなく、例えば北海道の函館湾に入ってきた場合は、陸上から肉眼で見られることもあるようです。
なぜ津軽海峡には、カマイルカが圧倒的に多いのでしょうか。松石教授は、「4~6月は餌となるカタクチイワシが来遊してきて、それを追って津軽海峡にやってくるのではないか」と推察します。
一方、冬(12~4月)にはキタオットセイがよく見られるようになります。
津軽海峡フェリーからカマイルカを見つけてみよう!
津軽海峡フェリーで函館―青森間を移動する際は、外部デッキに出てイルカを探してみてください。
カマイルカは全長1.7~2.5メートルほどと、鯨類では比較的小型の部類に入りますが、群れで泳いでいるので見つけやすいのが特徴です。そのボディーは、黒と白のツートンカラーです。フェリーの近くまで来ることもあり、ジャンプが大好きなので、船上からその姿を発見しやすいといえるでしょう。鎌状に曲がった背びれを探してみましょう。
【映像】GW中に津軽海峡フェリーのデッキから見るカマイルカの群れ(読者提供)
「津軽海峡イルカチーム」では、チーム発足を記念し、津軽海峡フェリーターミナルでパネル展を開催。津軽海峡エリアで見られる鯨類について、調査で分かった研究結果資料等を展示しています。函館ターミナル(函館市港町3丁目19-2)2階では2021年4月8日(木)から5月12日(水)、青森ターミナル3階(青森市沖館2丁目12-1)では5月14日(金)から6月27日(日)まで、入場無料で見学できます。(※開催期間は急遽変更となる可能性があります。)
津軽海峡フェリーは、今後もイルカチームと連携して船内イベントなどを実施していく予定です。
(取材協力:北海道大学鯨類研究会)