北海道でブレイクしそうなお土産とは?北海道の土産店主が裏事情を語る

観光旅行に土産は欠かせません。国内外から多くの観光客が訪れる北海道も例外ではなく、石屋製菓の白い恋人やロイズのチョコレートなど定番ものから知る人ぞ知るものまで、数多くの土産が製造・販売されています。

北海道にはまだまだ知られていない土産物があり、次々と新商品が開発されています。最近はどんな土産が売れ筋なのでしょうか。また、観光客に好まれる商品は変わってきているのでしょうか。今後どんな土産がブレイクしそうなのでしょうか。

こうした北海道土産の裏事情について道内主要3都市の土産店店主が語るトークイベントが、今年2月、札幌市中央区のノルベサ1階の北海道くらし百貨店アウトドアダイニング ミールラウンジ ノルベサ店で開催されました。

同イベントは、北海道くらし百貨店と株式会社ロフトワーク(東京都渋谷区)が開催。札幌市から北海道くらし百貨店の太田紗耶子さん、小樽市から小樽駅の駅なかマート タルシェの敦賀康夫さん、釧路市からたんばやの丹葉光宏さんがスピーカーとして参加しました。

地元発!あまり知られていない北海道土産商品

北海道くらし百貨店が注目する土産品

各店主はイチオシの土産品をプレゼンしました。札幌の太田さんは、生産量日本一を誇る北見産たまねぎを使った「北海道北見たまねぎがたっぷりの濃厚スープ」を紹介。北見たまねぎに隠し味のチェダーチーズを加えたチキンベースのオニオンスープで、5割がオニオンエキスパウダーというこだわりの一品です。

絵本作家そらさんとコラボレーションした「北海道いろのかわいい文具」は北海道命名150年をきっかけに立ち上がった企画で誕生。美幌の夕暮れいろ、札幌のポプラ並木いろ、上富良野の花畑いろ、積丹半島の海のいろをポストカードやマスキングテープにして販売しています。

北海道くらし百貨店ではほかにも、北海道唯一の生豆卸であるHAYAKAWA COFFEE(早川コーヒー)とコラボレーションしたオリジナルブレンドコーヒーも販売しています。

小樽で注目の土産品 

小樽駅構内で小樽や後志の特産品を販売するアンテナショップを約7年間運営する敦賀さんは、石狩市の藤女子大学食物栄養学科と小樽の洋菓子店「海の町の洋菓子店ガトーフレール」とともにコラボレーションし2018年10月に発売した「野菜のガレット」を紹介。砂糖の代わりに還元麦芽糖を使い、アスパラガス、じゃがいも、とうもろこしの3種類の北海道産野菜パウダーを練り込んで焼き上げた、健康志向の焼き菓子です。

岩内町の水産加工業者一八興業水産は、身欠きニシンのオリーブオイル漬け「にしんすぱ」を開発。洋食に合う味付けを目指して試行錯誤の末完成させたもので、北海道の新技術・新製品開発賞の食品部門で大賞を受賞しました。

そのほか、常温で持ち歩ける天日干し味付け数の子「珍味かずのこ」や、うにが多くとれた時代にうにを煮詰めて佃煮にした漁師めしを再現した佃煮「王様のうに」など、後志エリアで注目の水産加工品を紹介しました。

釧路で注目の土産品

釧路の丹葉さんは、釧路モカ女性プロジェクトが製造する「釧路漁網たおる漁網美人」を紹介。港町釧路らしい製品で、ボディタオルとして使うと、きめ細かな泡立ちを体験できます。

また、ネタ的なお菓子として釧路限定「鶴の鼻くそ」もピックアップ。「ヒグマの鼻くそ」という類似商品を参考に、タンチョウをヒントに開発した釧路らしい一品で、ピーナッツをココアで包んだ菓子です。

観光客が好む土産品は変わってきているのか

海外からの観光客を含め、観光客が買う商品は昔と比べて変わってきているのでしょうか。こうした疑問について小樽の敦賀さんは、「小樽に来る中国人観光客はかつて果物を買う傾向が強かったが、今では地元の人が食べるものを欲しがる」、丹葉さんは「釧路の海産物は美味しいことが認知されてきていて、地場ものに変化しつつある」と、地元のものが好まれる傾向があると話します。

敦賀さんは、「(営業している土産店は)6年たったが、毎年前年比100%を超えている。なんといっても地元のお客さんの底上げがあるから。震災時も前年対比105%で、地元の人がどんどん来てくれたから達成できた。インバウンドは昔のようにまとめ買いをしなくなり、ちょっとずつ買うようになったため客単価は減ってきた」。丹葉さんは売上について、「全体的には横ばい。国内の需要が減っている」と話します。

どういう土産が売れるのか、売れないのか

ところで、取り扱うか取り扱わないか、いわゆる目利きのコツはあるのでしょうか。小樽の敦賀さんは「目利きしない! 業者が『新商品考えたんだけどどう? パッケージどう? いくらだったら売れる? ターゲットはどこに当たる?』と聞いてくることがある。みんなで考えるというのが良いと思う」と語ります。また、「大前提として、売れるかな?というのが重要。そして、作った人の思いも重要。土産なので持ち帰れることも重要」と話しました。

続けて、苦労話も語ってくれました。「うちの隣はキヨスクさんなので、白い恋人やじゃがポックルなど定番の箱菓子とはかぶらないようにやっている。また、新千歳空港にそのまま向かうお客さんが多いので『新千歳空港に置いてないものはどれ?』『小樽にしかないものはどれ?』って聞かれることが多い。間違ったことは言えないので、空港の全店をまわって、扱っている商品を見てくるようにしている。また、新商品はスタッフ全員でかならず食べるようにしている。そうすることでお客さんにしっかりと美味しさを伝えることができると思う」。

こういうものがあったら売れそうだなというものについては、「半製品の動きが良い。レンジでチンなど、すぐ食べられるもの。常温だけではなく冷凍ものがうける」、「ドライフルーツなどヘルシーだけど体に優しいもの」「 “映える”土産物は北海道からも出てきてほしい」という意見が出てきました。

丹葉さんは、「旅行途中に寄ってくれるので、冷凍冷蔵物はなかなか厳しい。例えば乳製品は要冷蔵・冷凍が多いので、空港に行ってから買う傾向がある。観光中に常温で持ち帰れることは、商品開発において非常に重要な視点」と話します。

また、「冷凍冷蔵配達料金だと2,000円近くになることもある。買う前にいくらなの?ときかれる。発送料金が高いので、そのあたりをクリアできる商品づくりが大切」。「他のお店で買ったものと一緒に送りたいんだけど、という声にも応えていかないと」と、サービス業の難しさを明かしました。

北海道土産の課題

土産店の目線で、北海道土産の課題はあるのでしょうか。敦賀さんは、「価格帯とパッケージが悩む。一番は見た目、デザインだと思う。デザイナーに頼むと何百万かかるが、かといって素人に頼むと本当に売れるクオリティになるのかと。補助金を活用してデザイナーに頼むケースが多いが、もっともっとできたら売れるのにと思う」と、デザインの重要性を説きます。

丹葉さんは、「釧路地域に多くの人が来れば売上が伸びるが、そのひとつとして、年配の人のように若い人にもお土産文化が根付けばお土産業界は伸びる。『あの人のために買っていこう」ということが若い世代には少ないので。そのためには、人のことを思う気持ちが重要だなと感じる。デザインも若い人に向けたものにしないといけないし、それをもらった優越欲求をつくっていかないといけない。SNSで自慢できるようなものを販売していかないと思っている」と、若者に受ける商品開発の重要性を話しました。

北海道観光の昔・今・未来

北海道の土産店の店主は、北海道観光の今後にどんな期待を抱いているのでしょうか。

丹葉さんは、「昔は観光旅行といえば団体旅行で、土産店は旅行会社と提携していた。インバウンドは昔の日本人でいう団体旅行が多いが、日本人はレンタカーを借りて、スマホを見て評価を気にしながらフリー旅行をしている人が多い。流通が成長しているので北海道のものは東京でも沖縄でもどこでも手に入ると思うので、地域に根ざして地域性を出していかなければならないと感じる」。

敦賀さんは、「少しずつ増えていると思うのは、北海道らしいもの、たとえば真狩産のキタアカリ、インカのめざめが4つ入っていてレトルトになっているもの。このような北海道らしい特色のあるお土産が今後はもっと増えてくるのではないかと思う」。

また、今後期待される流れとして、「味が体験できるものは今後も成長すると思う。小樽の堺町も変わってきていて、かつてはオルゴールやガラス製品を売っているお店が多かったが、今は『コロッケ1個から食べられますよ』『お煎餅1枚から食べられますよ』という店が増えている。ちょっとずつ食べて楽しんでいくのが増えていくのではないか」と好まれる土産の変化に対応することの重要性を説きます。

太田さんは、「北海道の文化を作っていきたい。人が来ることで交流が生まれる。その流れでそのまま北海道に住み着いてくれたらいいなと思っている。そうなれるような商品作りに取り組んでいきたい」と話しました。

以上、土産店店主目線の北海道土産事情でした。観光客は以前に比べると、地元の人が好むものを買いたがる傾向にあることがわかりました。食べ歩きの需要を考えて体験型の食品がよいこと、持ち帰ることを考えると常温であること、冷凍冷蔵ものでも発送料をクリアできる商品開発が必要であること、パッケージデザインや、若者に受ける商品開発がこれから課題であることがわかりました。これからも、観光客のニーズの変化に合わせて、北海道の土産品も進化を遂げていくことでしょう。