雪の量は本当に毎年同じなのか?帳尻を合わせる積雪量のウソホント

毎年冬が来ると、「今年は雪が多いねぇ」とか「雪が少なくて楽だわぁ」などの会話が日常的に交わされます。しかし、雪が少ないと言っていた翌月には、帳尻を合わせるかのようにドカ雪が降ったり、逆に、雪が多いと言っていた翌月から春まで、目立った大雪が降らなかったり、そんな経験はないでしょうか。結局、毎年降り積もる雪の量は変わらないのではないか、そう考えることはないでしょうか。

実際のところ雪の量は変わらないのか、気象庁が発表している過去の気象データを元に、検証してみました。1998年(平成10年)~2017年(平成29年)の過去20年間を対象期間とし、札幌および日本海側の雪が多く降る場所、岩見沢、倶知安を対象地域としました。

また、気象庁の発表している過去のデータを取得して比較するのですが、雪が降る月は年をまたぐため、寒候年(前年8月1日~7月31日までの1年。2017年の場合、2016年8月1日~2017年7月31日)で統一して、データの差が解りやすいよう、折れ線グラフにします。

過去の毎月の降雪量で比較

北海道に暮らす皆様なら、前半降雪が少なく後からドカ雪が降ったとか、またその逆の経験は思い当たることでしょう。

気象庁のデータの中に、降った雪の量を表す「降雪」という項目があります。降雪量は毎時間積雪の深さを測り、1時間前との差を求め降雪の深さとして記録し積算したもので、実際にはどうなのか、過去20年の降雪記録のある月をすべてグラフにして見てみます。

▼20年間各月毎降雪合計(寒候年)

このグラフの、2000年、2004年、2008年、2016年を見ると各地ともに12月~2月に降雪が多い、山なりの形になっており、普通イメージする雪の降り方かと思います。

それに比べて、雪が降るであろう12月~2月の間で、前月との差が激しい年が幾つもあることがわかります。2002年の場合、各地共に12月にドカ雪があり、翌月の1月には他の年の1月と比べても明らかに降雪量が少なくなっています。また、2011年の場合、12月の降雪量が他の年の12月より少なく、翌月の1月にドカ雪が降っていることがわかります。

地域差はあるものの過去20年のうち約3割の年で、前月との差が150cm以上ある極端な雪の降り方をしているので、私たちの経験は、数値的にも間違いないということでしょう。

しかし、このグラフでは年によって降雪量が違うように見え、帳尻を合わせているようには見えません。1毎年の降雪量の差が見やすいよう、年毎の降雪量合計をグラフにしてみます。

▼20年間各年毎降雪合計(寒候年)

一見して年毎の降雪量には、バラツキがあることがわかります。

グラフの中での各地域の最小と最大の差は、札幌の1999年と2015年では265cm、岩見沢の2007年と2012年では551cm、倶知安の1999年と2017年では649cmの差があります。さすがに200cm(2m)以上もの差があるとなると、感覚的にも帳尻が合っているとは考えられません。

降ってくる雪を思い出してみると、綿のような軽い雪だったり、湿った重い雪だったりします。空気を多量に含んだ雪は、湿った雪よりも体積は大きく膨らむでしょうから、積もる深さも変わるでしょう。そう考えると、このデータだけでは判断できないように思われます。

積雪の深さを比較

気象庁のデータの中に、期間内における積雪の最大値である「最深積雪」という項目があります。

積雪量は自然のまま降り積もった雪の量を測ったもので、積もった雪が時間と共に自重で沈んでいったり、日照や気温等の影響を受けて溶けたりしますが、このデータならば、雪質に左右されない数値になるのではないでしょうか。

年毎の最深積雪をグラフにして比較してみました。

▼20年間各年毎最深積雪(寒候年)

前述の影響があるので、降雪のデータに比べ全体的に約5分の1ほどの深さとなっています。

グラフの中での各地域の最小と最大の差は、札幌の2000年と2012年では66cm、岩見沢の2012年と2017年では144cm、倶知安の2002年と2005年では112cmの差があります。約100cm(1m)の差があり降雪量程ではないにしろ、各年において積雪の多寡ははっきりと分かるでしょう。

「今年は雪が多かった」とか逆に「少ない年だった」という会話をよく聞きます。しかし「毎年の積雪量は帳尻を合わせて、ほとんど変わらない」という話を聞いたことがあります。このデータでは、そのようには見えません。では、なぜそのようなことが言われるのでしょうか。

降水量を比較

気象庁のデータの中に、「降水量」という項目があり、当然冬でも計測されています。降水量は雨量計で計るのですが、寒冷地の場合、電熱線や加熱油などのヒーターが備えられており、雪を溶かして計ります。このデータならば、雪の状態に関係なく降った量を得られます。

降水量はmm単位で計測されていますが、他のグラフと比較しやすいようにcm単位に直して、毎年の冬季の降水量をグラフにしてみます。

▼20年間各年毎冬季降水量合計cm(寒候年)

雪を溶かしていますので当然、数値は小さくなりますが、最深積雪ほどの差はないように見えます。また、最深積雪と降水量の値が比例していないことからも、雪には雪質や気温などの影響があることがわかります。

グラフの中での各地域の最小と最大の差は、札幌の2012年と2013年では47cm、岩見沢の2012年と2017年では57cm、倶知安の2008年と2013年では63cmの差があります。約50cmの差があり最深積雪のデータより差がないことがわかります。

まとめ

最後に、すべてのグラフを一つにまとめて見てみましょう。

▼20年間各年毎降雪、積雪、降水(寒候年)

降雪量のグラフでは、年毎に大きな差がありますが、最深積雪や特に降水量では、年毎の差はあまりないように見えます。降水量の50cmほどの差は、それだけで見ると大きな差ですが、グラフのように雪の量と比べると小さな差に見えます。「毎年の積雪量はほとんど変わらない」というのは、ここからきているのではないでしょうか。

これらのことから、

●「帳尻を合わせるような降雪はあるのか」については、必ずではないが30%の確率であり得る。
●「毎年積もる雪の量は変わらないのか」については、降雪量の変動に比べ降水量の変動は小さいので、どちらのデータを見るかで変わる。

となります。

見るデータの違いはありますが、それぞれ言われていることは、間違いではないでしょう。「帳尻を合わせるような降雪」は、個人の経験からくるものであり、「毎年積もる雪の量は変わらない」は、天気予報などから聞く降水量のデータによる見解なのでしょう。