道内最古の『灯台』は高さ1.3mだった!? 大成の小さな灯台「定燈篭」

北海道最古の灯台といえばどこかご存知だろうか。根室市の納沙布岬にある納沙布岬灯台?確かにそれは正解。しかし、それよりも前に、灯台の役割を果たした小さな小さな「灯台」が道内にあったのだ。それが、せたな町大成区太田地区にある高さ1.3mの定燈篭だ。

道内最古の灯台は納沙布岬だが……

根室市納沙布岬の「納沙布岬灯台」。道内最古の灯台として知られているほか、「北海道灯台発祥の地」としても知られている。日本最東端の同灯台は、リチャード・ヘンリー・ブラントンが設計した道内初の洋式灯台で、1872年8月15日に初点灯した。

一方で、現存する道内最古の灯台として知られるのは、石狩市の「石狩灯台」である。納沙布岬灯台は1930年に木造から現在のコンクリート製に改築したが、その点、石狩灯台は1892年1月1日に設置・初点灯し1908年に現在のものに改築された。現存で考えると、道内の最古の灯台は石狩灯台となる。

しかし、石狩灯台よりも、また、1872年に初点灯した道内最古の納沙布岬灯台よりも、それよりも前に灯台があったのだ。それは「定燈篭」と呼ばれるものだ。その定燈篭が、せたな町大成区太田地区にある。道内最古の灯台とも呼ばれるが、道内最古の定燈篭と呼んだほうが混乱せずに済むかもしれない。

安政年間に作られた小さな小さな灯台「定燈篭」

せたな町大成区の道道740号線を進んだ先の太田地区の帆越岬(道南五大霊場の一つである標高485mの太田山の麓、長大トンネルを抜けた先、「じょうとうの埼」と呼ばれてきた)に、その定燈篭はある。どこにあるのか、灯台らしきものは見当たらない。が、目を凝らして見ると、岩の上にぽつんと小さなものが乗っかっており、夕暮れになると光って幻想的になる。高さ1.3m、幅40cmの青銅製。ちょっと頑張れば持ち運べそうなほど、小さな小さな「灯台」だ。

旧大成町史によると、この定燈篭(常灯台)が設置されたのは1857年(安政四年)5月24~25日にかけてのこと。道内最古の灯台である納沙布岬よりも15年も前だ。当時は岩内、寿都方面から江差へ物資を運ぶため弁財舟が航行していたが、ここ帆越岬沖から尾花岬沖は潮の流れが速く、特に冬季は強風波浪のため多くの船が遭難した。

そこで太田の人たちが相談し、現在の太田神社拝殿前面から20m地点の崖の上に燈台を作り、毎夜2~3人が交代制でちょうちんや魚油(鮫油)を灯して航行の安全を守った。光達距離は約1.5㎞あったという。ちなみに燈台は、傘(蓋)の部分が「大」、灯す部分(灯器)が「田」、台座が「山」、四方向どこから見ても「太田山」の文字に見えるように作られていた。




実は現在あるのは、初代のものが時化で壊れたためレプリカである。復元前に定燈篭破片や台座などが発見され、本来の設置場所も判明したため、現在地に復元・設置した。台座の岩に刻み込まれた碑文によると、安芸の国の行者であった政四良氏が奉納したとされる。小さいものとはいえ、当時の海の安全を守った重要な「灯台」であったのだ。

したがって、設置当時のまま残っている「現存する道内最古の灯台」の座は「石狩灯台」で変わらないが、道内最古の灯台は、このせたな町にある「定燈篭」とも言える。なお、正式には、あくまで道内最古の洋式灯台は「納沙布岬灯台」とされているので注意が必要である。