スリッパ卓球と聞くと既にご存知の方も多いと思います。ご存じなくとも、その名称からスリッパで行う卓球ということは想像できるでしょう。毎年真狩村で行われる大会で、全国から参加者が集まる大会です。今年(2018年)も1月27日、第7回全日本スリッパ卓球選手権 兼 第12回まっかり温泉スリッパ卓球大会が開催されました。
スリッパ卓球というと、スリッパを使って卓球をすることは理解できますが、どんな道具を使うのでしょうか? また、真狩村でスリッパ卓球が始まったのはなぜでしょうか? 真狩村の選手たちが11月から毎週練習しているという体育館へお邪魔し、スリッパ卓球実行委員会事務局長の佐藤広大さんにお聞きしました。
スリッパ卓球とは?
スリッパ卓球は、スリッパをラケットの代わりに使用し、普通の卓球で使用するボール(40ミリ)より大きなラージボール(44ミリ)を使用して行います。
大会のルールは卓球のルールと一緒。男女別に予選トーナメント、決勝トーナメントを行い、予選は11点1セットマッチ、決勝トーナメントの準々決勝からは11点3セットマッチ。予選後には敗者復活戦もあるので、選手は必ず2試合以上行うことになります。
予選では1セットマッチですので、試合の流れは早く、番狂わせも起こることも。試合開始とともに熱い声援が飛び交うとのことです。
▼佐藤広大さん
戦いは、使用するスリッパ選びから始まる。
スリッパ卓球の一番のポイントは当然、使用するスリッパです。
大会の規定では、「先の空いているもの」、「世界スリッパ卓球大会公認ラケット」、「球を打つ面を改造したもの」は不可。それ以外の一般のスリッパであれば、デコレーションはOKとのことで、大会前にはスリッパチェックを行っているようです。
大会に出場もしている佐藤さんによると、以前は底面が柔らかく球が吸い付く感じがある、一般に公共施設などで使われているスリッパが主流だったそう。現在では底がしっかりしていて、滑り止めの溝があるトイレ用を使用する人が多いとのことです。
それでも種類は多くあり、どのスリッパが自分のスタイルに合っているか、各々がいろいろ試して決めているようです。普通の卓球と違い、このスリッパ選びが、楽しさを増幅させているのでしょう。
▼自分にあったスリッパ選びが重要
まっかり温泉と冬の集客。世界チャンピオン誕生、しかし……
お邪魔した日は、練習の最終日ということもあり、村内スリッパ卓球大会が行われていました。その中で全日本スリッパ卓球選手権へ向けて皆を熱く鼓舞する、大会副実行委員長の本間亨さんに、真狩村におけるスリッパ卓球の歴史をお聞きしました。
始まりは2006年。まっかり温泉を管理する商工会青年部と役場職員が温泉を盛り上げようと、「温泉宿には卓球台がある」という日本の温泉文化をヒントに、スリッパ卓球を考案しました。冬には温泉客が減少することから、翌2007年2月に第1回大会を開催し、第2回大会からは温泉だけでなく真狩村のPRも目的とします。
2011年6月には、同年の第5回大会優勝者と本間さん含め4名が、山形県河北町で行われた第8回世界スリッパ卓球大会へ挑戦。本間さんが優勝し世界チャンピオンになると同時に、皆の成績から真狩村の大会レベルの高さが認められ、翌年の第6回大会からは「全日本スリッパ卓球選手権」の冠もつけることとなります。
▼世界チャンピオン、本間亨さん
その後も、全国で行われているスリッパ卓球大会への参加、イベントの開催、ご当地温泉卓球振興協議会への参加などを通して、スリッパ卓球と真狩村の名は知られるようになり、毎年各種メディアでも取り上げられる冬の一大イベントとなっています。
実行委員として活動してきた本間さんですが、現在まで叶えられていない想いが一つあるそう。それは、真狩村で毎年行われる「全日本スリッパ卓球選手権」、いわばホームで開催する大会で、いまだ地元の優勝者が現れないことだと言います。
世界チャンピオンである本間さん自身も、ホームの大会での最高位はベスト4。しかもここ数年、男女共、神恵内村の選手に優勝連覇を許してしまっている状況といいます。なるほど、体育館に入った瞬間から伝わってくる熱気は、温泉集客とか村のPRという枠を超え、競技者としての想いだったのです。
▼気合の入った練習をする大会出場者最高齢の仁司忠志さん(70歳)
全日本スリッパ卓球選手権
大会当日まっかり温泉には、溢れるほどの人が集まっており、想像以上の人気であることがわかります。
参加者には昼食と温泉入浴が付いているほか、「ベストスリッパ賞」や「ベストコスチューム賞」など、上位入賞者だけでなく誰もが賞品を得られるチャンスがあります。
▼大会会場の「まっかり温泉」
開会式の後は3つの台が設置され、すぐさま予選開始。伺った通り、11点1セットマッチでの試合はスピーディーで、決勝トーナメントを目指すにはミスは許されません。仮装に力を入れている方も多く、応援と笑い声が響き渡り、試合というよりは卓球エンターテインメントと言ったほうが近いでしょう。
決勝トーナメントになると、様相は一変し、スリッパを使っているとは思えない内容となります。長いラリーにドライブやカット、攻守共に普通の卓球と変わりません。いや、普通の卓球でもなかなか見られないであろう選手の挙動一つ一つに歓声が上がります。
本間さん、佐藤さんをはじめ真狩村の選手たちは、準決勝、決勝までは進むものの、大会3連覇している神恵内村の松本遊さんに敗れました。女子では、真狩村のエース本間さんが準決勝まで進むも、これまた大会4連覇している神恵内村の小杉愛さんに敗れてしまいました。
そんな強さを誇る神恵内村へも、毎年遠征して練習しているとのことですので、来年へ向けてさらなる闘志がみなぎっていることと思います。
ここまでくると、真狩勢の優勝は悲願でしょう。来年の健闘を祈るとともに、さらに熱い戦いとなるであろうスリッパ卓球大会を見逃すことはできません!
▼女子優勝の小杉愛さん。賞品には真狩ハーブ豚他、豪華賞品が山ほど用意されている
【動画】動画で見る全日本スリッパ卓球選手権
決勝を狙うとなるとそれなりの技術は必要ですが、誰もが参加でき、見ているだけでも楽しい大会でした。
今年(2018年)7月7日には、第6回ご当地温泉卓球全国大会が、まっかり温泉で開催されます。スリッパのほかに、かまぼこ板や風呂桶などを使っての卓球大会。興味ある方は参加してみてはいかがでしょう。