雪が降らない地方ではあまり見ることはありませんが、雪が降る地方では、冬になると木々が縄で吊られていたり、竹で覆われていたり、枝が縛られていたり、といった光景をあちらこちらで見ることができます。いったいどうしてそのようなことをするのでしょうか? 今回、その作業に密着させていただき、その謎に迫ってみました。
その名称や目的は
まずはその名称から。木々を吊ったり、縛ったり、囲ったりすることを、「冬囲い」(ふゆがこい)と言います。
▼雪が降る前に、木々を守るためにされた冬囲い(円山公園)
これは、樹木(おもに庭木)を積雪から保護することを目的としています。すべての樹木を冬囲いするのかというとそうではなく、雪が積もった時に折れることが想定される枝や、押しつぶされてしまう低木などを囲ったり吊ったりします。
▼このように雪から樹木を守っている(円山公園)
今回、札幌市中央区にある中島公園での冬囲い作業を見学させていただきました。ちなみに、似たような言葉に「雪囲い」(ゆきがこい)がありますが、雪囲いは、冬の間、家屋などの建物を囲うことを言うのだそうです。
▼樹木によってさまざまな方法で冬囲いする
冬囲いは、樹木を雪から守るために行いますので、どのような方法を取ってもかまわないそうです。気をつけるべきは、木や植栽の大きさや樹種などにより、縛る、囲う、吊るなどの方法を考えることなのだとか。
▼中島公園の日本庭園の池にある島にある松の木
▼冬囲いをするとこんな感じになる
▼そして雪が積もるとこんな感じに
また、公園などの場合、単に雪から樹木を守るだけでなく、縛り目を揃えたり、縛り目の高さを揃えたりなど、公共の場らしく見た目にも配慮して冬囲いをしているのだそうです。
冬囲いあれこれ
冬囲いにはどういったものがあるのでしょうか。中島公園で見られる冬囲いを紹介しておきましょう。冬囲いは、決まった方法はなく、職人さんの裁量や技法に任されています。したがって、名称や呼び方などはそれぞれ違います。今回は、中島公園の職人さんにお聞きした呼び方で説明しています。
繩巻き
低木で、枝が細くて柔軟な樹木に適した方法で、いちばん簡単な方法です。縛る時に枝が折れないように注意しながら、樹木が立つように縛ります。縛る縄の位置を揃えるように注意しているそうです。
竹囲い
3本以上の竹を円錐状に立て、その周りを縄で巻いて固定したものです。植栽したての小さめの苗木にこの方法を用いることが多いのだとか。雪の侵入を防ぐように縄を巻くのがコツだそうです。
雪吊り
真ん中に高い支柱を立て、その頭頂部より何本かの吊り縄によって枝を吊る方法です。支柱のことを芯柱といい、頭頂部の縄が集まっている部分を頭飾りと言います。頭飾りの巻き方、デザインは職人さんによって異なります。枝の下に配した竹を吊っているのは、装飾目的の演出で使われる「裾竹吊り」を応用したものだそうです。
上記で説明した雪吊りのひとつですが、枝の下に竹を配せず直接枝を縛って吊る方法で、枝吊りと言われているそうです。
ほかには、藁で巻いた「藁巻き」、低木の上に竹で格子を組んだ「竹棚」、樹木を板で囲う「板囲い」など、さまざまな冬囲いがありますが、中島公園で見られるのは上記のものになります。
今回、冬囲い作業を見学させていただき、職人さんが、遠く離れた場所から確認したり、何度も角度を調整したり、縄を縛る位置を変えたり、めんどうな作業をこつこつと行っているのが印象的でした。完成した冬囲いは、まさに職人技。芸術とも言うべき美しさでした。こうやって雪の重みから樹木が守られているのだと、改めて実感しました。
【動画】冬囲い(雪吊り)作業の行程を動画でどうぞ