かわいいけどなかなか見られない!エゾクロテンとは?

 エゾクロテン。道内に生息する警戒心の強い小動物です。クロテンの亜種であり、国内では北海道にしか生息していません。中でも道北や道東で観察されることが多いようです。2010年1~2月の冬季国体(札幌市・釧路市共催)のマスコットキャラクターに選ばれています。

エゾクロテンの特徴

 尾を除く体長は約50cm、尾だけで15cmほど、体重は1~1.5kg程度です。これは雄のサイズで、雌は若干小ぶりです。細長い体の持ち主です。森林地帯の樹上を中心に生活し、ネズミなどの小型動物や昆虫をはじめ、ヤマブドウ・コクワなど果実も食べます。

 分類はネコ目イタチ科テン属です。ほかのクロテンは黒に近い毛皮ですが、エゾクロテンは白っぽい毛皮です。ただし手足および尾は黒いです。顔つきはまん丸の目玉で愛らしいという表現がぴったりです。

 アイヌ語では「カスペキラ」といわれてきました。意味は「しゃもじを持って逃げる」だとか。名前からもわかるように、人里にやってきては、ものを持って逃げたり、飼育されている鳥類が襲われたりしてきました。

国内唯一の展示、釧路市動物園のエゾクロテン

乱獲により減少したエゾクロテン

 かつて明治時代まではエゾクロテンは道内全域に生息していたとされています。とはいえ、テン類につきものの毛皮乱獲により、一時絶滅危惧種となりました。高級毛皮の素材として高く売買されました。

 エゾクロテンはシベリアのクロテンに比べると質が劣るとされていたとはいえ、同じクロテンというイメージで、北海道でエゾクロテンの乱獲が進みました。大正時代の1920年にエゾクロテン禁猟が宣言され、現在に至っています。

エゾクロテン VS ホンドテン

 実は道内にはエゾクロテン以外にもテン(ホンドテン)が生息しています。ホンドテンは本来、北海道以外の全国に生息していましたが、1940年代に毛皮生産目的で飼育するために北海道に持ち込まれました。しかし逃げ出したホンドテンが野生化してしまったため、現在は道南を中心に分布しています。

 一方で、危惧されているのは、エゾクロテンへの影響です。今でこそエゾクロテンは道北・道東、テンは道南を中心とすみ分けがなされていますが、今後、生息域が重なったり、交雑などが進むと、北海道固有種の純粋なエゾクロテンがいなくなってしまう可能性もあります。

 ちなみに、現在は道央地域でエゾクロテンとホンドテンの生息域の競合が観察されています。生息数減少が見込まれているエゾクロテンの将来は暗澹としています。