道東の別海町といえば、日本一の生乳生産量を誇る、酪農が盛んな町として知られています。そんな別海町を表すのが「人より牛の数が多い」という表現。別海町の人口が1.6万人なのに対して、牛の飼育頭数が11.3万頭と、なんと約7倍! 酪農王国北海道には、人口より牛の数が多い町が他にもありそう。どれくらいあるのでしょうか。ということで調べてみました。(本稿は2015年1月9日に公開した記事をリメイクしたものです)
牛の飼育頭数ランキングを見てみる
まず、北海道の牛飼育頭数を市町村別で見てみましょう。1位の別海町は2位の士幌町を大きく引き離して単独トップに立っています。道内で10万頭を超えているのは別海町だけです。トップ10を見ると、いずれも道東(十勝・釧路・根室各管内)ですべて占めており、中でも十勝管内の比率が高くなっています。
1位 別海町 113,469
2位 士幌町 69,087
3位 標茶町 53,627
4位 清水町 49,324
5位 中標津町 45,191
6位 新得町 34,981
7位 上士幌町 30,901
8位 鹿追町 30,292
9位 帯広市 28,837
10位 大樹町 28,302
※独立行政法人家畜改良センター集計、2014年9月末日現在(以下データ同じ)
11位以下を見ても、道東がほとんどであることに変わりはありません。そこで予想として、人口より牛のほうが多い市町村は道東に偏りそうです。その前に、前提として触れておかなければならないのが、牛飼育頭数ゼロ、そして牛飼育頭数秘匿の問題です。
牛の飼育頭数がゼロの市町村
そんな酪農王国北海道でも、牛の飼育頭数がゼロとされる市町村が幾つか存在します。例えば、利尻島では、ミルピスで有名な森原牧場が1991年、島最後の牧場を廃業。最近では2014年、秩父別町最後の牧場が離農してゼロとなりました。道内には同じように牛飼育がない市町村が13市町村(札幌市の区を除く)あります。
札幌市中央区・南区・西区・清田区 / 夕張市 / 歌志内市 / 新篠津村 / 福島町 / 泊村 / 神恵内村 / 仁木町 / 秩父別町 / 上砂川町 / 当麻町 / 利尻町 / 利尻富士町 / 礼文町
また、牛飼育頭数を公表せず秘匿する個人・法人・団体が存在する市町村もあります。該当する市町村内の牛飼育がすべて秘匿される場合、実際の飼育頭数がわからないため、これら12市町村(札幌市の区を除く)は除外することとします。
札幌市白石区・厚別区・手稲区 / 小樽市 / 美唄市 / 鹿部町 / 乙部町 / 寿都町 / 喜茂別町 / 共和町 / 古平町 / 雨竜町 / 沼田町 / 東川町 / 増毛町
人に比べて牛が一番多いのは士幌町?
では本題。179市町村から上述の25市町村を除いた154市町村のうち、人より牛が多い市町村はどれくらいあるでしょうか。結論から言うと、僅差を含むと51市町村ありました。
▼日高管内
新冠町
▼上川管内
愛別町 / 下川町 / 美深町 / 中川町
▼留萌管内
初山別村 / 遠別町 / 天塩町
▼宗谷管内
猿払村 / 浜頓別町 / 中頓別町 / 枝幸町 / 豊富町 / 幌延町
▼オホーツク管内
紋別市 / 津別町 / 小清水町 / 訓子府町 / 置戸町 / 佐呂間町 / 湧別町 / 滝上町 / 興部町 / 西興部村 / 雄武町 / 大空町
▼十勝管内
士幌町 / 上士幌町 / 鹿追町 / 新得町 / 清水町 / 芽室町 / 中札内村 / 更別村 / 大樹町 / 広尾町 / 池田町 / 豊頃町 / 本別町 / 足寄町 / 陸別町 / 浦幌町
▼釧路管内
厚岸町 / 浜中町 / 標茶町 / 弟子屈町 / 鶴居村 / 白糠町
▼根室管内
別海町 / 中標津町 / 標津町
渡島・檜山・胆振・後志・石狩・空知の各管内を除く地域で、中でも道東地方でその傾向が強いことが明らかに。特に十勝管内や釧路管内では、人口の多い釧路市・帯広市・音更町・幕別町・釧路町を除く全町村が該当します。では、何倍かで考えたとき、牛が7倍を数える別海町が一番なのでしょうか。
1位 士幌町 10.8倍
2位 別海町 7.2倍
3位 標茶町 6.7倍
4位 上士幌町 6.3倍
5位 鶴居村 5.5倍
6位 新得町 5.5倍
7位 鹿追町 5.4倍
8位 清水町 5.0倍
9位 大樹町 4.8倍
10位 豊頃町 4.8倍
▼マップで表すとこうなる。赤色で示したのが、人より牛が多い上位市町村。黄色は人より牛が多いすべての市町村(赤色も含む)。
このように、士幌町が6000人の人口に対し約7万頭の牛が飼育されており、2位の別海町を大きく引き離し1位になっています。冒頭で示した牛飼育頭数ランキングに照らしてみると、同じような名前が並んでいることに気付くはず。十勝・釧路・根室管内で人より牛が多い傾向が強いことがわかりました。