【知内町】知内町のおみやげに、「おっぱい饅頭」「美乳(おっぱい)サブレ―」「ちちかみ餅」など、「おっぱい」にちなんだお菓子があることをご存知ですか? 「道の駅しりうち」には、これらのお菓子が並んでいます。初めて訪れた人は、「おっぱい、おっぱいって、どうして!?」とびっくりしてしまうかも!? そこには、知内町に古くから言い伝えられている話がかかわっています。おっぱいの木ともいわれる杉の木がある、「知内公園」を訪ねてみました。
おっぱいの木に込められた願い
知内町中心部の知内公園に、おっぱいの木ともいわれる巨木があるという……。正式名称は「姥(乳母)杉」(うばすぎ)。公園駐車場から園内に入り、姥杉と書かれた矢印の方向に遊具のある広場を進んでいくと、敷地の端にひときわ存在感を放つ巨大な杉の木がありました。
▼知内公園入口。姥杉の方向を示す立札も
根元には、大きなコブがあります。隣に建つ石碑には説明書きが。「根元の大きな瘤は現在は一つだが、以前は女性の乳房のように二つあったといわれている」と書かれています。母乳があまり出ずに悩んだ母親が、この木の根元に洗米を供えて母乳がよく出るようお願いをし、その米を持ち帰ってお粥にして食べたところ母乳がよく出るようになったという古くからの言い伝えにもとづき、「乳母杉」「乳神さん」と呼ばれ、安産や授乳の神様として信仰されてきたそうです。北海道最古の神社である同町の「雷公神社」(1244年創建)の開祖・了徳院重一の妻が「乳不足で苦しむ母親を助けてあげたい」との言葉を遺して亡くなり葬られた場所に、後にこの杉が植えられたと伝わっています。
▼姥杉の前には鳥居と小さな社。巨木の根元のコブが気になる
▼姥杉の根元の大きな瘤
▼知内町は北島三郎さんの故郷。姥杉の前の鳥居の裏にはこんな文字も。
出産後の女性と赤ちゃんの育ちを見守る姥杉
今も昔も、新しい命を生み出し育てていくことに多大なエネルギーを必要とするのは変わらないでしょう。しかしながらやはり、現代からは想像がつかない古い時代の過酷な子育て環境に、思いを馳せずにはいられません。母親の産後の肥立ちが思うようにいかず母乳があまり出なければ赤ちゃんの生死に直結する中で神にすがる思いで、母乳が出るように、赤ちゃんが健やかに育てるようにと祈り続けた母親たちの思い。そんな思いを想像しながら見上げる姥杉は、神聖な雰囲気をまとっていました。
知内町郷土資料館によると、姥杉の推定樹齢は400~500年。公園の隅にどっしりとたたずむ姿は、長い間、地域の母親と赤ちゃんたちをさりげなく見守ってきたようにも見えます。知内町では、毎年1月17日に、「十七夜請」(じゅうしちやこう、俗称・おっぱい祭り)という、宮司以外は女性しか参加できないお祭りが行われます。米粉を練って乳房の形にしてお供えし、参拝者に御神酒が振る舞われた後に、お供えした米粉の餅を持ち帰って食べるそうです。
おっぱいにちなんだお菓子のお味は
▼手前から、「ちちかみ餅」「おっぱい饅頭」「美乳(おっぱい)サブレ―」
さて、おっぱいにちなんだお菓子のお味は? 「おっぱい饅頭」(2個入り税込220円)は、ホワイトチョコレートでコーティングされた練乳入りの白あんが優しい味わい。「美乳(おっぱい)サブレ―」(2個入り税込300円)は、ラムレーズンのクリームがサンドされた大人の味。冷凍品を自然解凍で味わう「ちちかみ餅」(2個入り420円)は、知内産の越冬カボチャとトマトを使った野菜の自然な甘みを生かしたあんが、柔らかい餅に包まれています。
おっぱいにちなんだお菓子と、母と子の健康を願ったおっぱいの木。知内町を訪れた際には、ぜひ味わい、訪れてみてはいかがでしょうか。
▼知内公園
北海道上磯郡知内町字元町 [地図]
▼道の駅しりうち
北海道上磯郡知内町字湯の里48-13