【函館市】函館市の「函館市地域交流まちづくりセンター」に、東北以北で最古といわれる手動のエレベーターがあり、センターを訪れてスタッフに申し出れば解説付きで乗せてもらうことができます。センターには何度か訪れながら手動エレベーターにはまだ乗ったことがなかった筆者が、このほど、スタッフの方の解説をいただきながら乗ってきました。
デパートだったまちづくりセンター
「函館市地域交流まちづくりセンター」は、1923(大正12)年に建てられた「丸井今井百貨店函館支店」が1969(昭和44)年に移転後、2002(平成14)年まで市の水道局として使われていた建物を改修。2007(平成19)年以降、地域活動の支援や市民の交流の場、地域情報の発信拠点としての役割を担っています。そのレトロで重厚なたたずまいは、訪れた人を落ち着いた気持ちにさせてくれます。
現存する東北以北最古のエレベーター
▼1934年設置の手動エレベーター。▼右:鉄製防火扉が外側につけられている
最初の手動のエレベーターは、1930(昭和5)年に設置。1934(昭和9)年に発生した死者2000人超の大火の際に建物全体が大きな被害に遭い、現在あるのは、この被害の後の改修時に設置されたもの。現存する東北以北最古の手動エレベーターといわれ、百貨店移転後の水道局時代も現役で活躍していたそうです。
ドアの上部には、停止している階を示す文字盤。5階建ての建物ですが、増改築を繰り返しており、現在まちづくりセンターとして使われているのは3階までです。ドアは二重構造。大火の後の再設置の際に、防火扉の役割を果たす鉄の扉が外側につけられました。
▼時計のようなものは停止階を表示する文字盤
手動エレベーターに乗ってみた
いよいよ、エレベーターに乗り込みました。エレベーターを上下させるレバーは、右向き矢印の先に「U」(up)、左向き矢印の先に「D」(down)の文字があり、右に倒すと上昇、左に倒すと下降する仕組み。各階に停止するときにはレバーをタイミングよく戻さないと、エレベーター内と建物フロアの間に段差ができてしまいます。乗っている人数や重さによってもレバーを動かす際の感覚が異なるそうで、スムーズに動かすためにはコツが要るのですね。5階到着時には段差なくエレベーターが停止し、スタッフの方は「うまい具合に停まりました」とニッコリ。ちなみに、万が一レバーを戻し忘れても安全に停止するように、1階と5階には安全装置がついています。
一般来館者が運転操作をすることはできませんが、スイッチを切った状態でレバーを握って倒す動きをさせてもらったところ、想像していたよりも軽い動き。逆に、安定した運転ができるようになるまでには経験も必要だったのでしょうね。
▼映像で見る手動エレベーター
観光客にも人気
大正時代建築の歴史ある建物の珍しい手動エレベーターということで、旅行誌などでも紹介されており、夏場の観光シーズンには乗車希望の観光客がかなり訪れるそう。また、地元の人が子どもに見させたいと家族連れで訪れることもあるそうです。
市電十字街電停から徒歩2分。一帯が官庁街だったころにはセンターのような独特な雰囲気の建物がたくさん並び、重厚な街の雰囲気を作り上げていたそうです。ぜひその頃の街の面影を感じながら、手動エレベーターの空間を楽しんでみてはいかがでしょうか。
▼函館市地域交流まちづくりセンター
所在地:函館市末広町4-19 [地図]
TEL:0138-22-9700
公式ウェブサイト