北海道を学ぶ

ドーレくんのモチーフにもなった絶滅危惧種シマフクロウの生態とは?

2017年6月19日に、釧路市動物園でシマフクロウの赤ちゃんが誕生しました。繁殖成功は7年ぶりのこと。シマフクロウといえば、北海道コンサドーレ札幌のクラブマスコット「ドーレくん」のモチーフにもなっていることで知られています。

日本では北海道にしか生息しないことから、「シマ(島)フクロウ」と名付けられ、アイヌの守り神としても尊重されてきました。しかし今、絶滅の危機に瀕しているのです。

そもそもシマフクロウとは? その生態、繁殖や保護の現状とは? 釧路市動物園飼育員・藤本智さんに話を伺いました。

北海道には二種類のフクロウが生息する!

北海道には、エゾフクロウとシマフクロウが生息しています。エゾフクロウは本州に住むフクロウの亜種で北海道全域に生息。円山や藻岩山、野幌森林公園など札幌近郊で見かけることもあります。

▼エゾフクロウは札幌近郊にも生息しています
ドーレくんのモチーフにもなった絶滅危惧種シマフクロウの生態とは?

シマフクロウも以前は全道に生息していましたが、現在は知床、釧路湿原、根室地方など限られた場所にしか生息していません。自然下での数は120~140羽程度といわれ、日本版レッドデータブックで絶滅危惧種IAランクに指定されているのです。

イヨマンテの儀式にシマフクロウ?

▼アイヌの人たちに崇められるシマフクロウ(釧路市阿寒のアイヌコタンにて)
ドーレくんのモチーフにもなった絶滅危惧種シマフクロウの生態とは?

アイヌの人々は、すべての生き物や自然現象に神が宿っていると考えていました。動物を神の世界に送る「イヨマンテ」は、神の魂を天に戻す儀式です。亡骸は神から贈られた「褒美」として、ありがたくいただいていたといいます。

イヨマンテの儀式というとヒグマをイメージしますが、阿寒のアイヌはシマフクロウを送っていました。阿寒湖近くにある「アイヌコタン」には、それを象徴するように大きなシマフクロウのレリーフが掲げられています。

シマフクロウ減少の理由とは?

▼生息地は減少の一途を辿っているシマフクロウ
ドーレくんのモチーフにもなった絶滅危惧種シマフクロウの生態とは?

エゾフクロウに比べてシマフクロウの数が著しく少ない理由は、その大きさにあります。体重600~800g、体長約50cm、翼開長約100cm のエゾフクロウに対し、シマフクロウは体重約4kg、体長約70cm、翼長約180cmと世界最大級。

木に空いた穴に巣を作りますが、森林伐採が進むとシマフクロウが巣営できる大木はほとんどなくなります。また、エサを取るのが苦手なため、魚が豊富でそれほど深くない川が必要です。生息に適した環境が失われていることが、個体数減少の原因といわれています。

釧路市動物園では7年ぶりにヒナが誕生!

▼北海道最大級!自然と調和した動物園
ドーレくんのモチーフにもなった絶滅危惧種シマフクロウの生態とは?

2017年6月19日、釧路市動物園にシマフクロウのヒナが生まれました。これで同動物園のシマフクロウ飼育数は15羽となります。

釧路市動物園だけに、これほど多くのシマフクロウがいるのには理由があります。1980年代、自然界でのシマフクロウの数は、推定70羽ほどに減少。1993年にシマフクロウの繁殖を目的として、東京都 上野動物園と鹿児島県 平川動物公園にいた2羽が釧路市動物園に集められることとなりました。

当時はすでにいた4羽と合わせ、6羽のシマフクロウしかいませんでしたが、トカチ(オス)とムム(メス)のペアリングがよく、この2羽だけで7回繁殖の繁殖に成功しています。ただ、今回生まれたヒナは別の”つがい”、ラライ(オス)とフラト(メス)の子どもです。

自然界でも難しい繁殖への挑戦

▼道内の動物園でも繁殖を目指しています
ドーレくんのモチーフにもなった絶滅危惧種シマフクロウの生態とは?

これまで生き残った個体は、すべて自然繁殖です。人工繁殖も試みたものの、生き残ることができませんでした。せっかく生まれても育てが上手くいかず、死んでしまうこともあります。釧路市動物園では、ヒナを子育ての上手なペアに育てさせるなどの工夫が行われています。

旭山動物園や札幌市円山動物園(非公開)で飼育されている“つがい”も、釧路市動物園からやって来ました。残念ながら旭山動物園で生まれたタマゴは無精卵、札幌市円山動物園のペアは同居歴7年になるにも関わらず、繁殖する気配がありません。もっとも野生でも繁殖は難しいそうです。

保護への取り組み

▼人の手で滅ぼし、人の手で回復させる
ドーレくんのモチーフにもなった絶滅危惧種シマフクロウの生態とは?

環境省などが国を挙げて保護に取り組むほか、日本野鳥の会や北海道シマフクロウの会などの民間団体が木に大きな巣箱を設置して巣営しやすいようにするなどの保護活動を行っています。

シマフクロウは、人が手をかけなければ絶滅は免れません。「自然破壊をやめ、人間が森に立ち入らなくなったとしても、シマフクロウが巣作りできるような木が育つようになるまで100年はかかります。彼らはそれまで待っていられるのか」という、藤本氏の言葉が印象的でした。

シマフクロウに会いに行こう!

▼道内3つの動物園で出会えます
ドーレくんのモチーフにもなった絶滅危惧種シマフクロウの生態とは?

シマフクロウを常設展示しているのは、釧路市動物園と旭川市旭山動物園のみ。

札幌市円山動物園では一般公開されていませんが、毎週土曜日15時から行われる「猛禽類野生復帰施設ガイド」に参加することで、会うことができるかもしれません。飼育員自ら「地味なガイド」と嘆いていましたが、そんなことはありません。ぜひシマフクロウ会いに行ってみてはいかがでしょうか。

筆者について

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吉田匡和

札幌在住の文筆家・写真家。日本のすべての年金制度(厚生年金・国民年金・国家公務共済・地方公務員共済・私学共済)に加入したことがあるという、自慢にもならない経歴を持っています。苦労しなくて済む程度のアウトドアが趣味で、夕日を見ながらビールを飲むのが大好きです。【Sクラス認定ライター】