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淕別村はなぜ陸別町になったのか―漢字も読みも変わった理由に迫る

  

道東の十勝管内北東部、オホーツク管内にも隣接する山間に、陸別町(りくべつちょう)があります。日本一寒いまちで、冬には「しばれフェスティバル」で耐寒テストが行われることで知られています。また、周辺に大きなまちもなく自然環境に恵まれていることから、日本最大級の大型望遠鏡を設置する「銀河の森天文台」があることでも有名です。

そんな陸別町は、かつて淕別村(りくんべつ)と呼ばれていました。なぜ、このような地名になり、なぜ漢字一文字と読みを変えることになったのか、歴史をたどってみましょう。

「驪群別」「陸別」「淕別」が入り乱れた明治初期

▼旧・陸別駅は道の駅「オーロラタウン93りくべつ」になっている
淕別村はなぜ陸別町になったのか―漢字も読みも変わった理由に迫る

陸別の地名はアイヌ語に由来します。とはいっても、「リクベツ」というアイヌ語ではありません。「高いところにある川」「高く上がっていく川」「高く危ない川」を意味するとされる「リクンペッ」からとられています。

江戸時代から用いられていたカナ表記「リクンベツ」に、漢字を当てて「驪群別」としたのが、明治初期の1874年4月。開拓使根室支庁の管轄になるにあたり、1873年7月20日の根室支庁管内大小区画案に伴って開拓使に報告された文書に、その地名の記載が残されています。

その直後には、現在使用する「陸別」の漢字が登場します。1874年に内務省地理局は全国村名小字調査で「陸別」と記載。さらに1875年3月、開拓使は各郡町村名称について、仮名をもとに「陸別(リクンベツ)」と記載しています。

しかしどういうわけか、翌1876年9月8日に開拓使が定めた北海道大小区画では「淕別村他三村六外区」と記載しており、「淕別」の漢字が使われています。

ですから、明治初期の開拓使区画指定の頃は、読みこそ「リクンベツ」で統一されていたものの、「驪群別」(根室支庁の文書)「陸別」(内務省地理局・開拓使の文書)「淕別」(開拓使の文書)の3パターンの当て字が用いられていたことになります。

「驪」という漢字はさすがに読むのも書くのも難しいですが、「黒い馬」という意味があります。確かに、当地で開拓の第一歩を踏み出した関寛斎が馬を持って入植しましたが、それはもっと後の1902年になってからのことです。それで、明治初期当時、野生の馬が見られたことにちなんでいるのではないかと考えられています。

「淕」という漢字は「みぞれ」や「雪の混じった雨」などの意味があります。当時どのような思いでこの漢字を使ったかは定かではありませんが、アイヌ語が意味する川「利別川」や、しばれる寒さや雪深さなどを表現したかったのかもしれません。

「淕別村」から「陸別村」へ

淕別村はなぜ陸別町になったのか―漢字も読みも変わった理由に迫る

大正時代に入り1919年4月、足寄郡各村戸長役場行政区画で、足寄村から利別村とともに淕別村を分離。淕別市街地に淕別外1村戸長役場が設置されました。1923年、戸長役場の廃止に伴い、二級町村制による「淕別村」が誕生しました。

ちなみにこのとき、まだ十勝支庁(現・十勝総合振興局)に含まれておらず、釧路国支庁(現・釧路総合振興局)の所管になりました。1948年10月21日に足寄村とともに十勝管内に編入され、現在の十勝の姿が完成しました。

その翌年、1949年8月1日には、「淕別村」を「陸別村」に改称することになります。あわせて、読みも漢字にあわせて平易な「リクベツムラ」に変更しています。

当時、1946年に制定された当用漢字制度により、難しい漢字を使っていた自治体は改称する例があり、陸別町が改称したのもそれが理由。より読みやすい漢字が当てられ、読み方もスムーズに読める形に変更となりました。

1910年に開通した国鉄網走本線(当時)「淕別駅(りくんべつえき)」も、村名が1949年に「陸別」に改称したことに伴い、3ヶ月半遅れの11月20日に「陸別駅」へと改称しています。池北線から第三セクターふるさと銀河線になった後、2006年に廃止となりますが、運転体験施設「ふるさと銀河線りくべつ鉄道」として現在に至っています。また、陸別駅を起点としていた「淕別森林鉄道」も村名改称に伴い「陸別森林鉄道」になっています(1953年廃止)。

▼ふるさと銀河線りくべつ鉄道
淕別村はなぜ陸別町になったのか―漢字も読みも変わった理由に迫る

そんな陸別村は1953年9月に町制施行して「陸別町」となり、現在に至ります。明治時代初期に3つの当て字から最終的に「陸別」が使われることになった陸別町。アイヌ語の読みから少し変わってしまいましたが、今も利別川の源流に近い標高の高い地域であることに変わりはありません。

参考文献:『陸別町史』

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