北海道を学ぶ

ミンミンゼミ北限の生息地は屈斜路湖の和琴半島だった

  

日本全国で夏の風物詩として知られるミンミンゼミ。その北限の地が北海道にあるのをご存知ですか? 場所は、釧路管内弟子屈町の屈斜路湖、和琴半島。ここのミンミンゼミ北限地「和琴ミンミンゼミ発生地」は国の天然記念物にも指定されています。しかも北海道東部ではここだけにしか生息しません。その理由とは?

北海道では渡島半島・定山渓・和琴半島に生息

ミンミンゼミ北限の生息地は屈斜路湖の和琴半島だった
日本国内ではメジャーなミンミンゼミも北海道では珍しい(イメージ)

「ミーンミンミンミンミンミンミー」と鳴くことで知られるミンミンゼミ。ドラマやアニメでは夏のシーンが描かれる際にその鳴き声が登場することが多々あります。実際、7~8月の暑い日にはその鳴き声が聞かれます。

そんなミンミンゼミは、成虫の体長が3.5センチほど。国内では本州・九州を中心に生息していますが、北海道では珍しく、ミンミンゼミの鳴き声を聞くことはあまりありません。道南の渡島半島から道央までの範囲で生息していますが、道北・道東ではほとんど生息が確認されていません。生息が知られているのは、札幌市南区の定山渓温泉、そして今回紹介する屈斜路湖和琴半島のみです。

ミンミンゼミ北限の生息地は屈斜路湖の和琴半島だった
北海道のミンミンゼミの生息分布図。渡島半島(函館・松前・森・奥尻島など)、道央(積丹半島・小樽・札幌定山渓)、屈斜路湖の3エリアに大別される(『弟子屈町史』をもとに作図)

札幌市博物館活動センターでは、2008年から札幌市内に生息するセミの分布を調査してきました。札幌市内では10種類のセミが確認されており、その一つがミンミンゼミ。2009年に定山渓温泉でミンミンゼミのぬけがらが見つかり、札幌市内での発生が初確認されました。2010年の調査では、「定山渓の白井川上流部や小樽内川上流部では複数の鳴き声が聞かれたため、ほかにも発生地があると考えられます」と記録されています。

天然記念物「和琴ミンミンゼミ発生地」

ミンミンゼミ北限の生息地は屈斜路湖の和琴半島だった
津別峠から見る屈斜路湖の和琴半島

道南から札幌周辺までのエリアでミンミンゼミの生息が確認されている一方、道北や道東ではほとんど生息が確認されていないというミンミンゼミ。唯一の例外が、屈斜路湖に突き出した和琴半島です。この地域だけ孤立した生息地というわけです。

和琴半島では、周囲約3.3キロメートルの半島のくびれ近くから突端にかけての一部分に生息します。

ミンミンゼミ北限の生息地は屈斜路湖の和琴半島だった
和琴半島におけるミンミンゼミの生息分布図(『弟子屈町史』をもとに作図)

幼虫時代は地中で生活。6月中旬頃から地上に出て、7~9月上旬まで鳴きます。通常、幼虫が樹木に上ることが多いのですが、和琴半島のミンミンゼミはそれと異なり、クマザサの葉っぱの裏で羽化することが知られています。

和琴半島のミンミンゼミは1931年(昭和6年)、宮部金吾博士によって生息が確認されたのが始まり。ミンミンゼミの分布北限地として貴重であるとして、鏑木外岐雄博士の申請により、1951年(昭和26年)6月9日に国の天然記念物に指定されました。

ミンミンゼミ北限の生息地は屈斜路湖の和琴半島だった
天然記念物指定を示す看板

1954年(昭和29年)には、採集した標本をもとに河野広道博士が新亜種「ワコトミンミンゼミ」と命名して釧路博物館報に発表するも、それは認められなかったという経緯があります。1962年(昭和37年)以降、地元中学校の協力を得て生息数調査も行われてきました。

北海道のレッドリストでは地域個体群「和琴半島のミンミンゼミ個体群」として指定。「その地域において絶滅に瀕しているか、その危険が増大している」として、保護に留意すべきと解説されています。

なぜ、和琴半島に孤立して生息?

では、なぜ和琴半島のミンミンゼミだけポツンと離れた場所で生息しているのでしょうか。その理由については諸説あります。下記は現在一般的に広まっている説で、あくまで推測になります。

ミンミンゼミ北限の生息地は屈斜路湖の和琴半島だった
津別峠から見る屈斜路湖の和琴半島

6000~8000年前の温暖期「縄文海進(じょうもんかいしん)」の頃は北海道全域にミンミンゼミが生息していたと考えられています。しかし、今から4000~5000年前頃に気温が下がったことにより分布区域が縮小、南下。噴火口や温泉湧出口などがある和琴半島は温泉熱(地熱)により気温が比較的高く、ここに取り残されたと考えられます。

北海道は積雪があり、幼虫期を地中で生活するセミにとっては厳しい環境。でも和琴半島は地熱のおかげで真冬を乗り切れたといえます。もしこの説が要因だとすれば、北海道の過去の気候変動を知る上で貴重な資料となります。

和琴半島では7~9月上旬までの、風が少なく天気の良い暑い日に、ミンミンゼミの鳴き声を聞くことができます。

参考文献『弟子屈町史』

筆者について

編集部

北海道ファンマガジン編集部。編集部スタッフが取材執筆した記事や、名前を出さないライターの記事、寄稿記事の掲載の際にもこのアカウントが使われます。